「お受験殺人」ではなかった99年の2歳女児殺害事件 地元で「全く目立たなかった地味な子」はなぜ幼女の命を奪ったのか


【写真】短時間で殺害、持参のバッグに入れて…実際の犯行現場

「なぜ」「どうして」の声が多く上がった1999年の幼女殺害事件。11月22日の発生当時は「お受験殺人」とも呼ばれたが、後に事実と異なることが判明する。代わりに明らかになったものは、女が抱えていた深すぎる心の闇だった――。「週刊新潮」の過去記事からこの事件を振り返る。

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折り畳んで持っていた黒いバッグに

 犯行は11月22日月曜日の8時間のあいだに、神隠しといっていい早業で実行された。東京・文京区の広壮な寺院。この日は有名企業の社葬があり、境内は午前11時頃から、人々の出入りが多かった。その寺の隣が、寺の経営する幼稚園。

 この日の11時半頃、幼稚園へ子供を迎えに行く保護者の中に、2歳の娘・Bちゃんを連れたAさん(32)もいた。長男を迎えに来たのである。そしてC(35)もやはり2歳の娘を連れ、長男を迎えに来ていた。

 母親たちの間では、19日に発表された国立大付属幼稚園の合否結果について、話に花が咲いていた。Bちゃんも合格した1人だったのだ。だが、暫くしてAさんが気づくと、Bちゃんの姿が見えない。

「B、見なかった?」
「さあ」

 Cが素早く動いたのは、このわずかの時間だった。園庭で遊んでいたBちゃんを連れて、境内の片隅にある共同便所に入り、Bちゃんが着けていたマフラーで首を絞めて殺し、折り畳んで持っていた黒いバッグに詰めた。園児の母親たちや葬儀関係の人たちが大勢いたのに、誰にも気づかれない早業だった。

新幹線で実家へ

「B、知らない?」
「知らない」

 そう答えたCは送迎用の自転車の前と後ろに長女と長男を乗せ、バッグを肩から提げて、自宅マンションに帰った。バッグを部屋に置くと、子供たちと別の寺に行った。夫(45)がここの副住職だったのだ。

「買い物に行くから、子供たちをお願い」

 部屋に戻ってバッグを持ったCは、地下鉄で東京駅に行き、14時過ぎの新幹線に乗って静岡駅で下車。タクシーで目的地に着いたのは16時半頃だった。高校まで暮らした生家だ。

「あの家の前にタクシーが止まったので誰だろうと思って見ると、Cちゃんでした。そのとき、Cちゃんは随分急いでるようで、タクシーを降りると、黒っぽくて少し大きなバッグを肩から下げて、小走りに家の方に走っていきました」(近所の人)

 生家の庭の土を掘り、裸にしたBちゃんを埋めた。しかし、道具を使わずに手で作業したから、埋めたというよりも、土をかぶせたという感じだった。道具を使わなかった理由について、別の住民は「Cの母親は家を出るときに納屋にも鍵を掛ける」と証言した。



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