東京都北部にある老人ホームの一室で、女優・中村玉緒(86)が静かな日々を送っています。その彼女を16年ぶりに訪れたのは、夫である故・勝新太郎さんの甥にあたる俳優、若山騎一郎(60)でした。長きにわたるブランクを経て再会した二人の間で交わされた会話は、勝新太郎さんとの深い絆と、玉緒さんの変わらぬ愛の姿を鮮やかに描き出しました。
16年ぶりの再会:若山騎一郎が語る中村玉緒の近況
若山騎一郎氏が中村玉緒さんとの再会を決意したのは、2009年の勝新太郎さんの13回忌で会ったのが最後だったからです。親族でありながら16年間も連絡が途絶えていたものの、姉と妻に相談し、中村さんの長女からも「喜ぶと思うから、ぜひ会って」との返事を受けて、訪問が実現しました。名優・若山富三郎さんを父に持つ騎一郎氏にとって、勝新太郎さんは叔父であり、中村玉緒さんは叔母にあたります。
中村玉緒さんは2年前のイベント出演を最後に公の場から姿を消し、現在は老人ホームで暮らしています。一部女性誌では、認知機能の低下も報じられていましたが、若山氏は10月12日に彼女の元を訪れました。
中村玉緒と勝新太郎さん
「楽しかった、すっごく幸せだった」勝新太郎さんとの記憶
久々の再会で話は尽きませんでしたが、中村さんはふと、壁にかかった写真を指差したと言います。室内には、勝新太郎さんと映画で共演した時の写真、結婚時のツーショット、ご両親の写真、そして夫婦と子どもたちの家族写真が飾られていました。中村さんが特に指差したのは、京都の動物園で昔に撮られたモノクロの家族写真でした。彼女はそれを指し、「本当に楽しかったん。楽しくて、すっごく幸せやったんやで」と、その時の幸福を噛みしめるように語ったのです。
「あのときパパさん(勝さん)はこう言ってくれたんよ」と、勝さんとの思い出を繰り返し語る中村さんの姿に、若山氏は深く心を打たれました。夫が残した14億円もの借金を20年以上かけて完済し、さらには2019年には長男・鴈龍さん(享年55)を亡くすという、想像を絶する苦難を経験してきたにもかかわらず、彼女の口から勝さんに対する愚痴や家族の悪い話は一切出なかったのです。
若山氏は、「おばちゃんは幸せだった当時の思い出だけを話していたんだ。今も『パパさんを愛しているの』と話す姿に、人はこんなにも人を愛することができるんだって思った」と語りました。つらい記憶はすべて消え去り、中村玉緒さんは今、かつて勝新太郎さんと共に過ごした幸せな記憶の中だけに生きている。そこには、私たちには計り知れない、彼女だけの幸福が存在しているのかもしれません。
結論
中村玉緒さんの人生は、夫・勝新太郎さんへの深い愛と、数々の苦難を乗り越えてきた強さに満ちています。現在、彼女が老人ホームで穏やかに、そして幸福な記憶に包まれて生きているという事実は、愛の力がいかに人の心を癒し、支え続けるかを教えてくれます。時を超えて変わらない夫婦の絆と、過去の美しい思い出に生きるその姿は、多くの人々に感動を与えています。





