米財務長官、FRBに大幅利下げ要求:日銀の金融政策にも言及

ワシントン—米財務長官ベセント氏は13日、連邦準備理事会(FRB)に対し、早期の利下げサイクル開始を強く求め、政策金利が現行水準を少なくとも1.5%ポイント下回るべきとの見解を示唆しました。この発言は、世界経済における主要国間の金融政策動向に新たな波紋を広げています。

米財務長官のFRBへの利下げ要求とその根拠

ベセント長官はブルームバーグとのインタビューで、FRBが「9月に50ベーシスポイント(bp)の利下げを開始し、一連の利下げを実施することが可能だ」と語りました。同長官は、いかなる経済モデルも現在の金利が「おそらく150─175bp低下すべき」と示唆していると付け加えました。

この大幅な利下げ要求の根拠として、ベセント氏は最近の米雇用統計を挙げました。具体的には、5月と6月分の雇用者数が大幅に下方修正され、さらに7月の雇用者数の伸びが鈍化した点を指摘。「もし5月、6月にこれらの数字が示されていれば、6月と7月の会合で利下げが実施されていたと思う」と述べ、この遅れを挽回するためにも「9月に50bp利下げが行われる可能性が非常に高い」との見方を示しました。

ワシントンDCの連邦議事堂で撮影されたベセント米財務長官。FRBの利下げに関する発言が注目される。ワシントンDCの連邦議事堂で撮影されたベセント米財務長官。FRBの利下げに関する発言が注目される。

市場の反応とFRB議長後任人選の動き

ベセント長官の発言を受けて、金融市場は即座に反応しました。CMEのフェドウォッチによると、市場は9月16─17日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%ポイントの利下げ確率を99.9%と織り込みました。これは、市場が長官の強いメッセージを真剣に受け止めていることを示唆しています。

また、インタビューでは、来年5月に任期満了となるパウエルFRB議長の後任人選についても言及されました。ベセント氏によると、現在10─11人の候補が検討されており、現職のFRB当局者と民間部門出身者の双方が含まれるとのことです。

CNBCの報道では、トランプ大統領が現在11人の候補者を検討しており、米投資銀行大手ジェフリーズの最高市場ストラテジストであるデイビッド・ゼルボス氏、ラリー・リンジー元FRB理事、ブラックロックのグローバル債券部門最高投資責任者リック・リーダー氏らが新たに選考リストに加わったと報じられています。さらに、トランプ大統領がFRB理事に指名した大統領経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長については、理事の任期が終了する来年1月以降はFRBにとどまることは想定していないとも述べられました。

ベセント長官による日本の物価動向と日銀金融政策への言及

ベセント長官はインタビューの中で、日本の物価動向と日本銀行(日銀)の金融政策についても言及し、米国債利回りが日本やドイツといった外国の金利動向から影響を受けていると指摘しました。「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」と述べ、グローバルな金融市場の相互作用に注意を促しました。

その上で、ベセント長官は日銀の植田和男総裁と会談したことを明らかにし、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」との個人的な見解を示しました。日本がインフレを抑制する必要があるとの認識も示しており、日本の金融政策の将来的な方向性に対する国際的な関心の高さが浮き彫りになりました。

結論

ベセント米財務長官によるFRBへの大幅利下げ要求は、今後の米国の金融政策の方向性を示す重要なシグナルであり、市場の即座な反応からもその影響力の大きさがうかがえます。同時に、同長官が日本のインフレ問題と日銀の政策スタンスに言及したことは、グローバル経済における金融政策の相互連関性とその複雑な課題を浮き彫りにしています。今後、FRBの動向だけでなく、日銀がどのようにインフレ抑制に対応していくかが注目されます。


参照元

  • Reuters
  • Bloomberg
  • CNBC
  • Yahoo!ニュース (元の記事提供元)