米ギャラップ社の最新世論調査によると、ウクライナ国民の多くがロシアとの戦争継続ではなく、交渉による早期の終結を望んでいることが明らかになった。「勝利まで戦い抜く」という開戦当初の圧倒的な支持は大幅に減少し、ウクライナ戦争に関する国民感情が大きく変化している現状が浮き彫りとなっている。これは、ロシアによる全面侵攻が始まった2022年当時の状況とは「ほぼ完全に逆転」した世論の変化であり、今後の戦況や国際社会の動きにも影響を与える可能性を示唆している。
ウクライナ世論に見る「戦い抜き」からの転換
ギャラップ社が2022年2月の侵攻開始以来、3年半にわたり4回実施してきたウクライナ人対象の世論調査は、国民の意識がどのように変遷してきたかを明確に示している。2025年7月1日から14日にかけて1000人を対象に行われた最新の調査結果では、ウクライナ人の69%が「できるだけ早期の交渉による戦争終結」を支持すると報告された。
ハルキウ南部の軍事墓地「アレヤ・スラービー」に並ぶ墓標。長引くウクライナ戦争で変化する国民感情を象徴する場所の一つ。
ギャラップのビガーズ上級国際ニュースライターは、この数字が2024年の52%から17ポイント増加したことに言及し、「2023年以降、ウクライナ国民のロシアとの戦争に対する感情に大きな変化が見られる。世論は『ほぼ完全に逆転した』」と分析している。実際、開戦直後の2022年の調査では、「勝利まで戦うべきだ」と回答したウクライナ人は73%に上り、交渉による戦争終結を支持する声はわずか22%に過ぎなかった。この「戦いの継続」への支持の低下は、今年の調査ではすべての年齢層、地域、属性において確認されており、国民全体の傾向であることが示されている。
戦争終結への期待とゼレンスキー大統領の支持率
一方で、ウクライナ国民の大多数は、戦闘が今後早期に終結すると楽観視しているわけではないことも、今回の調査で明らかになった。戦闘が1年以内に終結すると信じている者の割合は全体の約4分の1程度に留まり、その中でも「非常に可能性が高い」と考えている人はわずか5%のみだった。その反面、68%が「1年以内の戦闘終結はありそうにない」と回答しており、長期化への覚悟がうかがえる。
また、この調査では、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の支持率も測定された。今回の調査によると、ゼレンスキー大統領の支持率は67%となった。これは開戦直後の84%からは低下しているものの、昨年の60%よりは高くなっている。前大統領であるペトロ・ポロシェンコ氏の支持率と比較しても遥かに高い数値であり、戦争長期化の中で国民からの一定の信頼を維持していることが示された。
今回のギャラップ調査は、ウクライナ国内における戦争への認識が、開戦当初の「徹底抗戦」から「現実的な解決」へとシフトしている可能性を示唆している。国民の感情が「勝利まで戦い抜く」から「早期の交渉による終結」へと大きく変化している点は、今後のウクライナの外交政策や国際支援のあり方にも影響を及ぼす重要な指標となるだろう。