日本の右派に迫る「親米」の謎:対米自立を問う一水会・木村代表の視点

日本の右派勢力は、一般に保守的で国家主義的な思想を持つと認識されています。しかし、戦後の彼らの多くが「親米」を掲げるようになったのはなぜでしょうか。戦前は「反米」の傾向が強かったはずの右派が、なぜ戦後に一斉に親米へと転じたのか。そして、ドナルド・トランプ元米国大統領が日米安保体制への不満を滲ませる現在の国際情勢において、これからの日米関係はいかにあるべきなのでしょうか。本稿では、「対米自立」を訴える政治団体「一水会」の木村三浩代表が、自身の活動と客観的な歴史的経緯を踏まえ、その複雑な背景と未来への提言を語ります。

一水会事務所の壁に掲げられた三島由紀夫の肖像画と「憂國」の書。日本の右派思想の背景を示す象徴的な光景。
一水会事務所の壁に掲げられた三島由紀夫の肖像画と「憂國」の書。日本の右派思想の背景を示す象徴的な光景。一水会事務所の壁に掲げられた三島由紀夫の肖像画と「憂國」の書。日本の右派思想の背景を示す象徴的な光景。

「対米従属」の現状と「占領100年」への警鐘

一水会代表の木村三浩氏。対米自立と日本の主権確立を訴える。
一水会代表の木村三浩氏。対米自立と日本の主権確立を訴える。一水会代表の木村三浩氏。対米自立と日本の主権確立を訴える。

木村三浩氏が代表を務める「一水会」は現在、日本の真の独立、米国に追従する社会風潮の是正、世界平和の実現、そして世界愛国者の国際連帯を目指し、積極的に活動を展開しています。木村氏は、日本の現状について「戦後80年ということは、20年後には『対米従属』という名の、米国による事実上の日本占領が100年を迎えるということでもある」と指摘します。日本各地に米軍基地が広範囲にわたって存在することは、主権国家として異常な事態であり、日本国民はこの現実をまず認識すべきだと強調します。

不平等な日米安保条約と地位協定

この“異常な事態”の具体例として、木村氏は日米安全保障条約と日米地位協定の問題を挙げます。「米軍基地内は日本の法が及ばない、いわゆる治外法権であり、米軍関係者が犯罪を起こしても、犯罪捜査上の特権を受けることができる」と述べ、その不平等を訴えます。

特に象徴的な事例として、2017年にトランプ大統領が就任後初めて来日した際の出来事を挙げました。大統領専用機エアフォース・ワンで東京・横田基地に乗りつけ、シークレットサービスは拳銃を所持したまま、パスポートコントロールも受けずに入国しました。これは公式実務訪問であったとしても、随行員を含め米軍基地からの入国は、日本の主権が否定され、日本が米国の属国や保護国になっているのと同じ状態だと木村氏は断じます。日米安保条約および日米地位協定は、依然として不平等条約であり、日本は「対米自立」、すなわち真の独立を目指さなければならないと力説します。

横田基地で演説するトランプ大統領。日本の主権と日米地位協定の課題を象徴する場面。
横田基地で演説するトランプ大統領。日本の主権と日米地位協定の課題を象徴する場面。横田基地で演説するトランプ大統領。日本の主権と日米地位協定の課題を象徴する場面。

トランプ政権下での「対米自立」の好機

一方で木村氏は、「今こそ米国の日本支配からの脱却のチャンスだ」との見解を示します。第2次トランプ政権が「連邦政府の縮小」を目標に掲げ、国防予算削減のため、在日米軍の機能強化の取りやめを検討していると2025年3月に報じられたことを踏まえての発言です。「この報道を受けて親米保守の人たちは、『在日米軍の予算が縮小されたら、日本の安全保障上の維持機能が崩壊する』などと騒いでいますが、私にしてみれば大歓迎です。今こそ、日本が『対米自立』を果たす好機です」と、木村氏は現在の状況を前向きに捉えています。

木村氏が描く「総調和路線」の外交構想

木村氏は、対米自立に向けた具体的な「構想」を提示します。まず、米国とは日米安保条約を破棄して友好条約を結び、ロシアとは日ロ平和条約を締結、さらに朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)とも国交正常化を果たすべきだと提言します。日米安保条約を解消することで、日本が米国と対等の関係となり、中立で調和のとれた外交方針を示すことが可能になると考えます。これにより、ロシア、中国、北朝鮮は安心して日本への軍事侵攻の理由を失うと予測します。日ロ平和条約が締結されれば、北方領土問題の解決にもつながるかもしれません。何よりも重要なのは、日本が米国の戦争に巻き込まれないようにすることだと強調します。

「興亜主義」への回帰と究極の平和目標

こうした目標が容易ではないことは承知の上で、木村氏は日本の歴史に目を向けます。戦前の日本の右派勢力は「興亜主義」の路線をとり、アジア諸国と連帯して西欧列強に対抗していました。木村氏は、今こそこの思想に立ち返り、日本が周辺諸国との「総調和路線」を築くことで、真の平和を守ることができると訴えます。そして、こうした外交政策の究極的な目指すべきは、「戦争の違法化と軍縮の徹底」であると締めくくりました。

結論

日本の右派勢力の戦後における「親米」への転換は、複雑な歴史的背景と国際情勢の変化が intertwined (絡み合っている)結果と言えます。本稿では、一水会の木村三浩代表の視点を通じて、日米間の不平等な関係、特に日米地位協定の問題点を深く掘り下げ、現在のトランプ政権下の状況を「対米自立」の好機と捉える積極的な見方が示されました。木村氏が提唱する「総調和路線」は、日米安保条約の再考、ロシアや北朝鮮との関係改善を含む、大胆かつ独立志向の外交戦略です。これは、日本の主権回復と平和維持に向けた新たな議論の契機となるでしょう。


参考文献: