ローソン、コンビニ駐車場で「車中泊」サービス開始 – 急増するニーズと多角化戦略

ローソンが千葉県内の店舗で開始したコンビニ初の車中泊施設「RVパーク」が、注目を集め、既に週末を中心に高い利用率を記録している。これは単なる新規サービスにとどまらず、変化する社会の旅行ニーズに対応し、既存のインフラを最大限に活用する同社の新たな多角化戦略の一環として注目されている。約1年間の実証実験として始まったこの試みは、コンビニエンスストア業界に新たな可能性を提示している。

「泊まれるコンビニ」RVパークの概要と初期成果

この革新的な取り組みは、ローソン、日本RV協会、そして貨幣処理機メーカーであるグローリーの三者連携によって実現した。現在、千葉県内の合計7店舗(一宮東浪見店、御宿新町店、天津小湊店、富浦インター店、南房総岩井海岸店、富津湊店、館山山本店)で展開されている。

実証実験の対象エリアとして房総半島が選ばれた背景には、豊富な観光資源と高い車中泊ニーズがある。加えて、対象となる全店舗が24時間営業で広い駐車場を有している点、スーパー銭湯や公衆浴場が近くにあり、かつ民家から離れた立地であることも重視された。

ローソンの店舗駐車場に停められたキャンピングカー。「コンビニ初の車中泊施設RVパーク」の利用風景を示す。ローソンの店舗駐車場に停められたキャンピングカー。「コンビニ初の車中泊施設RVパーク」の利用風景を示す。

ローソンのRVパークは、専用サイトからの事前予約・決済システムを採用しており、利用料金は1泊2500円から3000円。各店舗1日1台限定で、チェックインは午後6時から、チェックアウトは翌午前9時までとなっている。利用者には許可証、電源ドラム、店内トイレの利用許可、そしてゴミ袋1枚が提供される。

サービス開始直後の1週目には、ほぼ100%という驚異的な予約率を記録。その後は落ち着きを見せたものの、週末は依然として高い予約率を維持しており、ローソン新規サービス部の戸津茂人氏も「想定していたよりも利用率は高い」と、その手応えを語っている。

「車中泊」市場の急拡大とローソンの参入理由

ローソンが車中泊サービスに参入した背景には、国内における車中泊市場の顕著な拡大がある。日本RV協会の調査によると、全国のRVパークの数は2024年12月時点で500カ所を超え、道の駅や日帰り温泉施設、飲食店などの駐車場の一角で展開されている。これは、利用者が宿泊場所を確保できる一方で、施設提供側も集客や施設の利用促進に繋がるという、双方にとってのメリットがあるためだ。

また、車泊サービスを展開するトラストパークのデータでは、コロナ禍前の12倍に利用者が増加していることが示されており、車中泊が新たな旅行スタイルとして定着しつつあることがわかる。

宿泊費高騰と多様化する旅行ニーズ

車中泊ニーズの高まりは、いくつかの社会的な要因とも深く関連している。日本総研が今年6月に発表した調査結果によれば、宿泊費はコロナ禍前の約1.3倍にまで高騰しており、特にインバウンド需要の回復がその一因とされている。これにより、国内旅行者にとって割安な宿泊手段が求められる傾向にある。

加えて、旅行ニーズの多様化も背景にある。ペットと一緒に旅を楽しみたい、小さな子ども連れでホテル泊に気兼ねしてしまうといった声は少なくない。実際に、ローソンのRVパーク利用者からは、「子どもが泣いても周りを気にしなくていい」「犬と一緒に泊まれるホテルが少ないから車中泊を選んだ」といった具体的な声が寄せられており、ペット連れや家族での利用が目立つ。

ローソン側のメリットと効率的な運営体制

全国に広がる店舗網を持つローソンにとって、広大な駐車場を持つ店舗が多いことは大きな強みだ。夕方から朝にかけての利用客が少ない時間帯に、空きスペースを有効活用できることは、同社にとって新たな収益機会の創出に直結する。RVパーク利用者が店舗で買い物をする機会が増えれば、さらなる売上向上も期待できる。

また、今回の車中泊サービスの運営をグローリーが担当することで、ローソン側の店舗負担が最小限に抑えられている点も特筆すべきだ。戸津氏は「人手不足の中で新しいことを始めるにはオペレーションが重要。店舗の負荷が少ない形で進めることを重視した」と述べており、効率的な運営体制が初期の成功に貢献していることが伺える。

ローソンの「RVパーク」は、車中泊ニーズの高まりという社会トレンドと、宿泊費高騰などの社会課題に対応する新たなビジネスモデルである。既存のコンビニエンスストアのインフラを最大限に活用したこの多角化戦略は、同社の新たな成長ドライバーとなる可能性を秘めており、今後の全国展開にも期待が寄せられる。


参考文献: