80年代から90年代にかけて、「たけし軍団」の一員として数々のバラエティ番組を席巻したスキンヘッドの裸芸人、井手らっきょさん。特に『スーパーJOCKEY』や『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)で見せた身体を張った芸風は多くの視聴者を魅了しました。俊足のスプリンターとしても知られ、『ビートたけしのスポーツ大将』(テレビ朝日系)ではソウル五輪金メダリストのフローレンス・ジョイナー氏に勝利するほどの腕前でした。そんな井手らっきょさんは現在、故郷である熊本にUターンし、自身のカラオケスナック「らっきょの小部屋II」を経営しながら、新たな生活を送っています。
過去の活躍と異色の経歴
井手らっきょさんの芸能界でのキャリアは、そのユニークな芸風と並外れた運動能力で築かれました。特に注目されたのが、100メートルを10秒89という驚異的なタイムで走破する俊足です。この才能は、バラエティ番組だけでなく、本格的なスポーツ企画でも存分に発揮され、視聴者に強い印象を残しました。たけし軍団の一員として、体を張ったパフォーマンスは彼の代名詞となり、当時のテレビ界に欠かせない存在でした。
故郷・熊本へのUターン決断の背景
長年東京を拠点に活動してきた井手さんが、故郷・熊本へのUターンを決断したのは、2016年の熊本地震が大きなきっかけでした。震災直後から、熊本のテレビ番組からコメンテーターとしての出演依頼が増加し、やがて週に一度は熊本を訪れるほどの頻度になりました。東京との往復の負担を考慮し、地元からの強い「求められる」声に応える形で、本格的な移住を決意。18歳まで育った熊本を一度は離れたものの、再び戻ることになったのです。
スキンヘッドに笑顔を見せる現在の井手らっきょさん。熊本でスナック「らっきょの小部屋II」を経営している
「暮らす場所」としての熊本の魅力再発見
Uターン後、井手さんは故郷・熊本の新たな魅力を発見したと語ります。かつて暮らしていた頃よりも格段に「住みやすい」と感じているそうです。繁華街は活気に満ち、車で約1時間走れば山や海にアクセスできる自然豊かな環境が広がっています。また、食事が美味しく、物価が安いことも大きな魅力。特に家賃は東京の約3分の1程度で、駐車場込みでもリーズナブルに済むとのこと。学生時代の友人や、90歳を超えるご両親が健在であることも、井手さんにとって熊本での生活を豊かにする要素となっています。
カラオケスナック「らっきょの小部屋II」の経営実態
熊本市内で経営するカラオケスナック「らっきょの小部屋II」は、井手さん自身が毎日店に立つことを信条としています。約十数坪、28席の店内は、金曜日や土曜日を中心に団体観光客や企業の接待などで賑わいを見せています。井手さんが「本人がいない店が多い中で、ここは僕がいつも店に出ていますから」と語るように、ファンや客を大切にする姿勢が繁盛の秘訣です。
しかし、2020年からのコロナ禍は大きな打撃となりました。2018年にオープンし順調だった経営も、公的支援を受けても赤字に転落。感染症法上の位置づけが5類に移行し支援が終了した際には、人生初の借金を背負うほどの苦境に立たされました。以前川崎で経営していたダーツバー「らっきょの小部屋」を含めても、借金は初めての経験だったと振り返ります。幸い、現在は客足が戻り、コロナ前の90%程度まで回復しており、持ち直しの兆しが見えています。
故郷での新たな絆と未来
井手らっきょさんは、Uターン後の生活で、東京にいた時には得られなかった故郷ならではの新たな絆を深めているようです。特に家族との時間は、彼にとって大きな支えとなっています。故郷で親しい人々との再会と新たな関係性を築いていることが伺えます。
スキンヘッドの裸芸という強烈な個性で一時代を築いた井手らっきょさん。その華々しい過去に甘んじることなく、故郷・熊本でカラオケスナックの経営者として新たな挑戦を続けています。熊本地震をきっかけとしたUターン、そしてコロナ禍という未曽有の困難を乗り越えながらも、自身の店に立ち続け、熊本の魅力を再発見し、家族や友人との絆を深める彼の姿は、多くの人々に共感と勇気を与えることでしょう。故郷の地で、地に足の着いた生活を送る井手らっきょさんの今後のさらなる活躍に期待が寄せられます。