日産追浜・湘南工場生産終了が問う「大企業の雇用安定神話」の行方

大企業の雇用は盤石だという通説は、どこまで通用するのでしょうか。日産自動車が発表した追浜工場と子会社・日産車体の湘南工場での自動車生産終了は、合計5000人規模の従業員に影響を及ぼすと懸念されています。現場では「急なリストラはない」と説明されるものの、その真実が問われています。本稿では、日産の経営危機とその歴史を踏まえ、製造業の拠点が縮小・閉鎖した場合の雇用の行方、そして誰が守られ、誰が追われるのかについて深く掘り下げます。

日産追浜・湘南工場、生産終了が地域経済と雇用に与える影響

今年7月、日産自動車の神奈川県横須賀市にある追浜工場、および神奈川県平塚市に位置する子会社・日産車体の湘南工場(日産車体)において、それぞれ2027年度末と2026年度末までに自動車生産を終了する方針が発表されました。この発表は、地元自治体を巻き込み、広範な雇用への懸念を引き起こし、各メディアで報道されています。

発表によると、両工場自体は閉鎖されません。しかし、追浜工場の従業員は約3900名、湘南工場も1000名を超える規模であり、これらの全従業員が同じ場所で同じ仕事を継続できるとは考えにくい状況です。さらに、生産終了の影響は直接的な雇用に留まらず、部品供給業者や関連取引先、従業員が利用する周辺の店舗やサービス業、ひいては従業員家族の生活圏全体に広がる深刻な波及効果が懸念されています。

日産自動車の追浜工場または湘南工場、広大な敷地に多くの車両が並ぶ様子。生産終了が発表された自動車工場。日産自動車の追浜工場または湘南工場、広大な敷地に多くの車両が並ぶ様子。生産終了が発表された自動車工場。

大企業の「盤石な雇用」は幻想か?再就職支援の専門家が語る現実

部外者から見ると、日産のような著名な大企業であれば、自治体も対策を協議し、ほとんどの雇用が守られるのではないかと楽観視しがちです。実際に、報道では両工場が閉鎖されないこと、ある時期まで雇用が維持されること、そして新たな機能の模索や国内他工場への統合といった対策が報じられています。

しかし、筆者の見解では、どれほど多様な対策が講じられたとしても、雇用と地域への大きな影響は避けられないと危惧しています。これは日産に限らず、大規模工場の閉鎖や生産停止、人員整理に共通する課題です。多くのリストラされた中高年の再就職を支援してきた経験から、大規模工場が生産活動を停止した際にどのような影響が生じるのか、その現実を解説します。雇用問題は、表面的な情報だけでは見えない複雑な側面を抱えているのです。

参考文献