信越トレイル開通20周年:里と山を繋ぐ魅力と地域貢献

斑尾山(飯山市・信濃町、1381メートル)と苗場山(栄村・新潟県境、2145メートル)を結ぶ「信越トレイル」が、ことし2005年の第一弾開通から20周年を迎えました。ブナ林の広がる山間部から、歴史を感じさせる集落まで、約110キロメートルにわたるこのロングトレイルは、「里と山を結ぶ」独自のコンセプトで多くのハイカーを魅了し続けています。本記事では、20周年を迎えた信越トレイルの多様な魅力と、その維持・発展を支える地域の人々の思いに迫ります。

信越トレイル全ルート地図、長野県と新潟県の県境沿いに延びる約110kmのロングトレイル信越トレイル全ルート地図、長野県と新潟県の県境沿いに延びる約110kmのロングトレイル

多彩な魅力:里エリアと山エリア

信越トレイルは、その全長約110キロメートルを大きく二つのエリアに分けて楽しむことができます。一つは豊かな自然を満喫できる「山エリア」、そしてもう一つは地域の歴史と暮らしを感じられる「里エリア」です。

「昔はこの植物から繊維を取って、衣類にしていたんです」。信越トレイルの登録ガイドを務める黒川小角さん(39)=飯山市=は、栄村と新潟県津南町にまたがる山あいの集落、秋山郷を案内しながら、辺りに自生する「アカソ」を指して説明します。中津川の深い渓谷に広がる秋山郷は、冬には豪雪に閉ざされる隔絶された環境にあり、かつての厳しい暮らしぶりが垣間見えます。7月22日に結東から大赤沢までの一部を歩くと、かやぶき屋根にトタンをかぶせた古民家の脇を緑に覆われた小道が続き、林の中の旧道沿いには、かつて住宅や田畑の礎だったであろう石垣が森に埋もれるように残っていました。黒川さんは「人の暮らしや地域の歴史を感じながら歩くのが楽しい」と、里エリアの魅力を語ります。

信越トレイルの里エリア、伝統的な家屋が点在する集落の小道信越トレイルの里エリア、伝統的な家屋が点在する集落の小道

一方、斑尾山から天水山間の約80キロメートルは主に、豊かなブナ林を歩く「山エリア」に当たります。幹がすらりと伸びた立ち姿や、灰色がかった樹皮のブナが美しく、枝を揺らす緑の葉が陽光を透かし、森全体が輝いているようです。辺りが霧に包まれると、幻想的な雰囲気に一変し、ハイカーを魅了します。新潟県長岡市のパート従業員、山本智子さん(49)は「ブナの森が好き。何度来ても良い」と、その魅力を堪能していました。

ハイカーを魅了する道のり:年間1万人規模

長野・新潟県境に連なる信越トレイルは、2005年に関田山脈の尾根伝いを歩く斑尾山―牧峠間の約50キロメートルが最初に開通しました。その後、2008年に牧峠―天水山間の約30キロメートルが延伸され、さらに2021年には秋山郷を含む天水山―苗場山間の約30キロメートルが加わり、全10セクション、総延長約110キロメートルの壮大なロングトレイルが完成しました。里と山を結ぶこの多彩な魅力に惹かれ、年間1万人前後のハイカーが訪れる人気スポットとなっています。

信越トレイルは、単なる山歩きだけでなく、日本の美しい自然、そしてそこに息づく人々の暮らしと歴史を感じられる貴重な体験を提供しています。開通20周年を迎え、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。このトレイルが地域活性化の一翼を担い、未来へとその価値を繋いでいくためには、ルート整備に携わるボランティアやハイカーを受け入れる地域住民の継続的な協力が不可欠です。