今年5月10日、宮内庁は上皇さま(91)が東大病院での精密検査の結果、無症候性心筋虚血と診断されたと発表しました。入院中、美智子さまは連日4時間以上お見舞いに訪れ、深い愛情とご夫妻の強い絆を示されました。このような折、今年1月に出版された美智子さまの歌集「ゆふすげ」が異例のベストセラーとなり、改めてお二人の日常と愛情に注目が集まっています。
2024年10月20日、美智子さま90歳のお誕生日に際して公開された上皇ご夫妻の温かいお写真。上皇さまの健康と美智子さまの歌集への関心が高まる中で、お二人の絆が感じられる一枚です。
美智子さまの歌集「ゆふすげ」誕生秘話と反響
2025年1月に上梓された美智子さまの歌集「ゆふすげ」は、昭和から平成にかけて詠まれながらもこれまで未発表だった歌をまとめたもので、発行部数10万部を超えるベストセラーとなっています。この歌集の出版を強く勧めたのは、皇室の和歌の相談役を務める歌人の永田和宏氏でした。永田氏は、美智子さまが“皇后陛下の御歌”としてではなく、一人の歌人“美智子”として素晴らしい歌を多く詠まれていることに感銘を受け、個人の歌集として世に出すべきだと進言したと明かしています。彼の目には、皇太子妃や皇后としてのお立場を超え、一人の女性としての等身大の心情が映し出されていたのです。
等身大の愛を詠んだ美智子さまの和歌
永田氏が特に注目したのは、美智子さまが歌に込めた上皇さまへの素直な愛情と、深い絆を示す描写です。例えば、上皇さまが皇太子時代に詠まれたとされる一首、〈暁の色をもちたるハゼの名を和名アケボノと君なづけましき〉からは、研究者として新しいハゼの種を発見し、ご自身で命名された上皇さまを誇らしく思う美智子さまの“惚気”ともいえる心情が伝わります。国民の象徴であり続けたお二人の間に、ごく普通の一組の夫婦としての瞬間が垣間見える、貴重な歌です。
また、〈まなこ閉ざしひたすら楽し君のリンゴ食みいます音を聞きつつ〉という歌には、日常のささやかな瞬間に見出す愛情と、歌人としての巧みな表現力が凝縮されています。永田氏はこの歌について、「横で夫がおいしそうにリンゴを食べている、その音を目を閉じて聞いているだけで楽しい。夫が何をするにも楽しいと感じられるという、『御馳走さま』という感じの歌です」と解説しています。この歌は五七五七七の韻律から外れた破調のリズムでありながらも、美智子さまの心の躍動が読み手にも心地よく伝わるリズム感を持っており、長年の作歌経験によってご自身の呼吸を獲得された、非常に巧みな歌であると評価されています。
結論
上皇さまのご体調が報じられる中で、美智子さまの深い愛情が込められた歌集「ゆふすげ」のベストセラーは、改めて上皇ご夫妻の揺るぎない絆と、国民に寄り添う温かいお人柄を浮き彫りにしました。そこには、公的なお立場を超えた、一人の女性としての素直な感情と、長年培われた歌人としての卓越した技量が見事に融合しており、多くの読者に感動と共感を呼んでいます。
参考資料
- 週刊文春 2025年5月25日号
- 宮内庁発表資料
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/df0b350bf5dd3741ae9d7290407a939ab01a6ee8