◇社会学的皇室ウォッチング!/174
物価が上がり、人びとの生活は苦しい。やり繰りが苦しいのは皇室も同じだろう。天皇家への「給与」ともいうべき内廷費(3億2400万円)は1996年以来、値上げされていないためだ。皇室に30年ぶりの「ベースアップ」はあるのだろうか。(一部敬称略)
内廷費は、天皇家にある5人(天皇ご夫妻、上皇ご夫妻、愛子さま)の私的な活動に使われる費用で、公的活動に使用される宮廷費と区別される。お手許(てもと)金とも呼ばれ、一旦渡されれば、使途を公表する必要はない。1996(平成8)年、それ以前の2億9000万円から改定されて、現在の額となった。
10月31日に発表された2020年を100とした東京都区部の消費者物価指数(総合、速報値)は111・8であった。前回の内廷費見直し時は99・6だから、同年を基準とすれば、物価は12・25%上昇した。
実は、内廷費の見直しには「1割ルール」(10%ルール)と呼ばれる改定基準がある。1968(昭和43)年、「皇室経済に関する懇談会」で定められた。それは、①国家公務員給与改善率、②消費者物価指数(東京都区部総合)を利用し、これらの増加幅が10%を超えた場合、内廷費を1割増額しようというルールである。前回から物価が12・25%上昇した今年、それも来年度予算が編成される今の時期、内廷費アップも予想されるが、実際はどうだろうか。
そのため、二つの指数を少し厳密に見ていこう。今年8月7日、人事院は3・62%の大幅な月例給改善を勧告した。ただし、1%を超える改善勧告は、平成の初期以降は、昨年と今年しかなく、マイナス勧告が続いた時期もあった。96年を100として、その後の改善率を掛け合わせると、今年は107・43となる。したがって、残念ながら、①は1割を超えていない。「失われた30年」の間、給与水準が低迷した影響で、過去2年の改善だけでは1割には足りなかった。






