ワシントンで8月18日に開かれたウクライナのゼレンスキー大統領と米国のトランプ大統領、さらに欧州からの7人の指導者たちが参加した首脳会議は、ウクライナ和平へ向けて欧米が最初の一歩を記した、重要な会議として歴史に残るだろう。ウクライナ平和維持軍をめぐり、欧州諸国の責任と負担は一段と増す。
侵攻後で最も前向きな発言をしたゼレンスキー
この会議の歴史的な意義は、ゼレンスキー大統領とプーチン大統領の間の首脳会談への筋道が、初めて付けられたことだ。ワシントンの会議後、トランプ大統領はプーチン大統領に電話をかけ、同氏から「ゼレンスキー大統領と会っても良い」という言質を取り付けた。
これまでプーチン大統領は、ゼレンスキー大統領の直接会談の要請を拒否してきた。その意味で、トランプ大統領は両者の仲介役として重要な役割を演じた。
ゼレンスキー大統領が会議後にホワイトハウスの前で記者団に向けて発したコメントは、2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、彼の言葉としては最も前向きな内容だった。「領土問題については、私とプーチン大統領が話し合う。ワシントンの首脳会議では、ウクライナにとって不利な決定は一切行われなかった。安全についての保証(セキュリティー・ギャランティー)や、ロシアが自国に連行したウクライナの子どもたちの帰還、捕虜の交換など重要な問題のディテールについては、今後文書化していく」。
彼の言葉は自信と期待に満ちていた。「トランプ大統領との会談は、これまででベストの会談だった」とも言った。
ゼレンスキー氏のコメントは、一部のメディアが会議前に報じていた、「ウクライナは、まだロシアが完全に占領していないドネツク地方などの支配権を、ロシアに移譲する」というロシアの提案を、首脳会議の参加者たちが重視しなかったことを示す。トランプ氏がウクライナにこの提案を押しつけなかったことは、欧州勢にとって僥倖(ぎょこう)だった。