トランプ前米大統領がメキシコとの国境に設置された壁を黒く塗装するよう指示したことが明らかになり、その意図と背景に関心が集まっています。この指示は、彼の長年にわたる強硬な移民政策の新たな一環として注目されています。
国境の壁「黒色化」の具体的な内容と目的
ブルームバーグの報道によると、ノーム米国土安全保障長官は8月19日、トランプ大統領の指示により国境の壁全体を黒色に塗装する方針を明らかにしました。ただし、この塗装に必要な費用や具体的な期間については言及されませんでした。
ノーム長官の説明によると、黒色塗装の主な理由は二点あります。一点目は、鉄製の壁の錆びつきを遅らせ、寿命を延ばすことによる耐久性の向上です。二点目は、黒い壁が太陽光を吸収して高温になり、不法移民が壁によじ登るのを困難にすることで越境を阻止する目的があるとされています。この措置が移民にとって厳しい条件ではないかとの指摘に対し、長官は「触らなければ良い。人には選択権がある」と述べています。
トランプ氏の反移民政策の象徴としての国境の壁
高さ9メートル、10~15センチメートル間隔で鉄製の柱が設置されたこの国境の壁は、トランプ前大統領が第1次政権時に建設を進めたものであり、彼の「反移民政策」の象徴とされています。現在、この壁はテキサス州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、カリフォルニア州など、米国とメキシコ国境の約64%にわたって設置されています。
米国・メキシコ国境に立つ、黒色化が指示された壁。不法移民対策の象徴。
指示の背景にある移民取り締まり件数の減少
トランプ前大統領による今回の黒色塗装指示は、最近の国境での不法移民取り締まり件数の減少に対する彼の懸念が背景にあると分析されています。テキサス州エルパソ地域の当局者の話では、この1週間における1日平均の不法移民逮捕件数は約41件に留まり、さらに1日に約9人が摘発されずに国境を越えていると報告されています。これは、1年前に1日平均400件、2023年には最大2300件に達した不法移民逮捕件数と比較すると、大幅な減少を示しています。トランプ氏は、このような現状を「取り締まりが緩んでいる」と見ている可能性があります。
トランプ氏のその他の強硬な移民政策
トランプ前大統領は、就任初日から大統領令を通じて移民事前インタビュー予約アプリケーション「CBPワン」の廃棄を指示するなど、強硬な移民政策を一貫して展開してきました。また、本年6月にはカリフォルニア州ロサンゼルスで発生した不法移民取り締まりに反発するデモを鎮圧するために、州防衛軍を投入するなどの対応も行っています。これらの措置は、彼がいかに移民問題に対して厳格な姿勢を貫いているかを示しています。
まとめ
メキシコ国境の壁の黒色塗装指示は、トランプ前大統領の移民問題に対する揺るぎない強硬姿勢を改めて浮き彫りにしました。この措置は、壁の機能性を向上させるという名目のもと、彼の象徴的な反移民政策をさらに強化する意図があると考えられます。今後の米国における国境管理と移民政策の動向が引き続き注視されます。
参考文献
- Bloomberg
- Yahoo!ニュース (元記事)