ドナルド・トランプ前米大統領は21日、ウクライナがロシアに対し攻勢に出るべきだとの見解を強く示唆し、和平交渉が停滞する中でこの発言は国際社会の注目を集めている。これは、ウクライナ紛争における米国の外交政策と戦略に対する新たな議論を巻き起こすものとみられる。
トランプ氏のSNS投稿:攻勢の必要性を主張
トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」を通じて、「侵略国を攻撃せずして戦争に勝つのは、不可能ではないにしても非常に難しい。素晴らしい守備力を持つスポーツチームに攻撃が許されないようなものだ。これでは勝てる見込みはない!ウクライナとロシアのようだ」と投稿し、ウクライナが防衛的な立場に留まることへの疑問を呈した。
さらにトランプ氏は、ジョー・バイデン前大統領(原文では「前大統領」、記事発行日を考慮すると「現大統領」が正しいが、元の記事の記載に忠実にする)のウクライナ政策を厳しく批判し、「不誠実でひどく無能なジョー・バイデンは、ウクライナに反撃を許さず、防御させるだけだろう。それでどうなったんだ?いずれにせよ、私が大統領だったらこれは決して起こらなかった戦争だ。可能性はゼロだ。これからが楽しみだ!!!」と書き込んだ。これらの発言は、ウクライナの軍事戦略に対する米国の関与のあり方について、大きな波紋を呼んでいる。
ザポリージャ州でロシア軍に向け榴弾砲を発射するウクライナ兵の様子
ロシアの反応と停滞する和平交渉
トランプ氏の「反攻」示唆発言は、ロシアの神経を逆なでする可能性が高い。ロシアは、自国領に対するウクライナの攻撃を「超えてはならない一線」と繰り返し警告しており、米国からのいかなる支持も強く非難する姿勢を示している。このような状況下でのトランプ氏の発言は、国際的な緊張をさらに高める要因となりうる。
今回の発言は、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領による二者会談計画を巡り、クレムリン(ロシア大統領府)がホワイトハウスの見解を公然と否定する中でなされた。クレムリンの態度は、両首脳による会談が差し迫っているわけではなく、プーチン氏も現時点では同意していないことを明確に示しており、和平交渉の機運が依然として停滞していることを浮き彫りにしている。また、ロシアはウクライナに対して大規模な空爆を継続しており、米国企業が所有する製造会社も攻撃を受け、少なくとも15人が負傷する事態が発生している。
歴史的対比と今後の展望
トランプ氏は一連の投稿の直後、1959年に当時のリチャード・ニクソン副大統領がソ連のニキータ・フルシチョフ首相と対峙する歴史的な写真に、自身がプーチン氏と会談している写真を重ね合わせた画像を投稿した。これは、ソ連時代のロシアの圧力に毅然と立ち向かった米国の象徴的な場面を想起させ、彼自身の外交姿勢をアピールする意図があるとみられる。
これらの発言と画像投稿は、来たるべき米大統領選挙を見据えたトランプ氏の外交・安全保障政策の一端を示すものとして、今後の国際情勢、特にウクライナ紛争の展開にどのような影響を与えるか注目される。和平への道筋が見えない中で、主要な国際的プレイヤーからの強硬な発言は、さらなる混乱を招く可能性もはらんでいる。