ピュー調査で判明:LGBTQ+の結婚・育児願望と米国の同性婚権をめぐる懸念

世界的な少子化が進行し、アメリカでは同性婚の権利を保障する判決が覆される可能性に懸念が広がる中、ピュー・リサーチ・センターが実施した最新調査は、LGBTQ+当事者と非当事者の結婚や家族に対する願望を浮き彫りにしました。この調査結果を、2013年の同センターのデータと比較することで、LGBTQ+コミュニティにおける家族観や結婚観の重要な変化が見えてきます。本記事では、米国の社会・政治情勢と出生率の動向を踏まえ、この調査結果が持つ意味と専門家の見解を深く掘り下げます。

「オバーグフェル判決」覆るか?高まる同性婚の権利への懸念

アメリカでは現在、同性婚の権利を法的に保障する「オバーグフェル対ホッジス」最高裁判決が見直される可能性が、社会的な議論の焦点となっています。最高裁の右傾化に伴い、この歴史的判決を覆す動きが現実味を帯びており、すでに2022年には長年にわたり中絶の権利を保障してきた「ロー対ウェイド」判決が破棄されたことで、類似の懸念がさらに強まっています。もし同性婚が全米で無効とされれば、その是非は各州の判断に委ねられることになり、地域によって権利が異なる状況が生まれる可能性があります。

こうした権利をめぐる文化的な争点と並行して、世界各国で少子化が進んでいる点も注目に値します。米議会予算局(CBO)の最新予測によれば、アメリカの合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの平均数)は今後30年間で1.6にとどまる見通しです。これは、移民なしで人口を維持するために必要とされる2.1を大きく下回る水準であり、社会の持続可能性に関わる重要な課題として認識されています。

米国で同性婚の権利と子育てをめぐる状況を示すLGBTQ+カップルと子ども米国で同性婚の権利と子育てをめぐる状況を示すLGBTQ+カップルと子ども

LGBTQ+の「結婚したい」「子どもが欲しい」願望の変化

今年8月に公表されたピュー・リサーチ・センターの最新調査は、LGBTQ+と非LGBTQ+の成人を対象とした意識調査です。この結果、結婚経験のない50歳未満の成人のうち、59%が「いつかは結婚したい」と考えていることが明らかになりました。これは、社会全体で結婚への意識が依然として高いことを示しています。

特に注目すべきは、子どもがいない50歳未満のLGBTQ+成人のうち、3分の1が「将来的に子どもを持ちたい」と回答した点です。これに対し、非LGBTQ+の回答者ではその割合が47%と、LGBTQ+層より高いものの、LGBTQ+コミュニティにおける子育てへの関心が高まっていることが見て取れます。実際、2013年の調査では約28%のLGBTQ+成人が「いつかは子どもを持ちたい」と回答しており、今回の2025年のデータではそこから5ポイント増加していることからも、その変化が明確です。

2013年の調査でも結婚に関する意向が尋ねられましたが、当時はLGBTQ+回答者のうち合計60%が「すでに結婚している」もしくは「将来的に結婚したい」と考えていました。これは、今回とは異なる基準が用いられていたものの、LGBTQ+コミュニティが結婚や家族形成に対して強い願望を抱いていることを示唆しています。

専門家が指摘するLGBTQ+カップルの子育ての現実

同性愛カップルに関する地理的・人口統計的データをまとめた書籍『The Gay and Lesbian Atlas』の共著者であるギャリー・J・ゲイツ博士は、このデータが持つ意味について、次のような専門的な見解を述べています。

「一般的な結婚とは異なり、LGBTQ+の人々にとっての子育ては、非LGBTQ+の人々に比べて複雑かつ高額になることが多い」とゲイツ博士は指摘します。これは、同性愛カップルが親になるためには、養子縁組、代理出産、生殖補助医療といった特定の選択肢に頼ることが多く、これらのプロセスには異性カップルには通常発生しない費用や法的手続きが伴う場合があるためです。このような現実的な課題が存在するにもかかわらず、LGBTQ+の人々が子育てへの願望を高めていることは、彼らの家族形成への強い意志と、社会における多様な家族の形が増加している現状を浮き彫りにしています。

結論

ピュー・リサーチ・センターの最新調査は、アメリカにおけるLGBTQ+の人々の結婚および育児に対する願望が高まっていることを示しています。これは、同性婚の権利をめぐる法的な不確実性や、子育てに伴う経済的・社会的な課題が存在する中で起きている重要な変化です。世界的な少子化の文脈において、LGBTQ+コミュニティが示す家族形成への強い意欲は、社会が多様な家族のあり方をいかに支援し、その権利を保障していくべきかを問いかけています。今後、法制度の動向や社会的な支援体制が、LGBTQ+カップルの家族形成をどのように後押ししていくかが注目されます。

参考文献

  • Pew Research Center reports: (具体的なURLは提供されていないため、一般的な表現)
  • U.S. Congressional Budget Office (CBO) projections: (具体的なURLは提供されていないため、一般的な表現)
  • Newsweek Japan original article: (具体的なURLは提供されていないため、一般的な表現)