大阪・関西万博の会場内オフィシャルストアで発生したグッズ万引き事件において、大阪府警は「鉄道好き」を自称する大学生6人を逮捕しました。彼らは鉄道写真撮影を趣味とする、いわゆる「撮り鉄」の仲間であり、東京から東海道新幹線に無賃乗車して大阪入りしていたことが明らかになっています。この一連の行為は、日本の鉄道文化と社会規範に対する深刻な課題を浮き彫にし、世間の厳しい目を向けさせています。
警察の取り調べに対し、彼らは日常的に無賃乗車を繰り返していたと供述。万博会場への入場に関しても、大人料金ではなく12〜17歳向けの「中人」チケットを使用していたとされます。これらの行為が報じられるや否や、SNS上では当事者の大学生だけでなく、「撮り鉄」コミュニティ全体、さらには鉄道趣味そのものに対しても強い批判とバッシングが巻き起こっています。
鉄道愛好家による不正行為と社会の反応
今回の事件は、これまでも度々問題視されてきた一部の鉄道ファンの行動に、再び焦点が当たる形となりました。長年鉄道ファンとして活動してきたある男性は、今回の事態に深い憤りを示しています。彼は「ただでさえ鉄道ファンのイメージ悪化を招く事件やトラブルが頻発している中で、最もバッシングを受けている『撮り鉄』が無賃乗車までして逮捕されるとは、許しがたい」と語ります。このような問題が続けば、鉄道ファン全体が社会から冷遇され、趣味としてのイメージ低下は避けられないとの懸念が広がっています。
大阪府警の警察官が事件捜査にあたるイメージ
一方で、鉄道ファンのイメージは既に低下しており、鉄道会社側も一部の不正行為に手を焼いているという声も少なくありません。現役の鉄道駅員は、「鉄道の知識を悪用すれば、いくらでも不正乗車ができてしまう」と指摘します。「乗り鉄」と呼ばれる鉄道旅行愛好家の中には、駅が無人になる時間帯や駅員が常駐しない駅、警備が手薄な駅に関する詳細な情報を把握している者が少なくないという実情があります。悲しいことに、そうした状況を狙って無賃乗車を行う者もおり、仲間内で情報交換を行うグループまで存在するとされています。インターネット上でも、こうした情報が公然と流通しているため、鉄道会社にとっては大きな迷惑となっているのが現状です。
深まる鉄道ファンのイメージ悪化と「無法地帯」の現実
筆者は過去に、青森県の無人駅で東京の「御徒町駅」の初乗り運賃の切符が落ちているのを目撃したことがあります。これはおそらく、東京から普通列車を乗り継ぎ、無人駅で不正に降車した結果でしょう。一体何時間かけてここまで来たのかと想像を巡らせてしまいますが、これは紛れもない犯罪行為です。
鉄道ファンの間で撮影スポットとして人気の東海道新幹線沿いの風景
前出の駅員によると、地方の無人駅ではこのような切符が何枚も落ちていることが珍しくなく、事実上、無賃乗車の「聖地」と化している場所さえあるといいます。会社側も抜本的な対策を講じきれておらず、結果として野放し状態になっているのが現状です。今回の万博での事件は、単なる万引きや無賃乗車の枠を超え、一部の鉄道ファンの間で蔓延するモラル低下と、それに対する社会の厳しい視線を改めて浮き彫りにしました。鉄道愛好という純粋な趣味が、少数の不正行為によって全体として誤解され、信頼を損なう事態は避けなければなりません。
今回の事件は、鉄道愛好家コミュニティ全体が、自らの行動規範を見直し、より高い倫理観を持って趣味と向き合うことの重要性を示唆しています。社会との共存を目指し、健全な趣味活動の発展に努めることが、今後の鉄道文化を守る上で不可欠となるでしょう。
参考文献:
- Yahoo!ニュース (記事掲載元: デイリー新潮) 「撮り鉄を逮捕した大阪府警」(2025年8月25日掲載)