昨年の衆院選、今年の東京都議選、参院選と相次ぐ選挙敗北にもかかわらず、続投を明言している石破茂首相の「本当の思惑」について、自民党副総裁などの要職を歴任した山崎拓氏(88)が言及し、大きな注目を集めている。政界の「指南役」として知られる山崎氏の証言は、石破政権の今後の動向を探る上で重要な鍵となるだろう。特に、日本の安全保障に関わる「2027年問題」への危機感が、首相の続投意欲の背景にあると指摘されており、国内外の情勢に関心を持つ人々にとって見過ごせない情報だ。
石破首相の「真の思惑」を語る自民党元副総裁の山崎拓氏
「石破おろし」への冷静な見方と派閥政治の変化
21日に放送されたBS-TBS「報道1930」にVTR出演した山崎拓氏は、現在進行中の「石破おろし」の動きに対し、「私はそんなに心配していません」と冷静な見方を示した。多くの人々が不安を抱いている状況や、首相を引きずり降ろそうとする勢力が暗躍している可能性を認めつつも、それらが「大きなかたまりになって力になっているわけではない」と分析し、現時点での「石破おろし」の動きは決定的なものではないとの認識を表明した。
山崎氏は自身の政治家としてのキャリアが始まった昭和の時代と比較し、自民党内の権力構造の変化にも言及した。かつての「三角大福中」と呼ばれた5大派閥が存在した時代を「5つの城があるのと同じだった」と表現。しかし、現在の自民党にはそのような「城」は存在しないと指摘し、派閥解消が進んだ現代の政治状況が、権力闘争の形を変化させていることを示唆した。この現状を踏まえ、山崎氏は「たぶん、あと2年やって、その時にだれにバトンタッチするか考えると思います」と述べ、石破首相が3年の任期を全うしたいという強い意思を持っているとの驚くべき見解を示した。
石破首相の「真の狙い」:2027年問題への危機感
山崎氏は、石破首相が「いちばんやりたいこと」として「『2027年問題』だと思う」と具体的に指摘した。これは、台湾有事の可能性が最も高まるとされる2027年を指すもので、安全保障の論客として知られる石破首相の胸の内に深く根差した危機感があるという。山崎氏は「そういう事態になれば日本は巻き添えを食う。日本の平和と安全が損なわれるということになるから。何としても(台湾有事を)阻止したいのが、本当の(続投の)思惑ですから」と語り、日本の安全保障を守ることが石破首相の続投における最大の動機であると推測した。
また、山崎氏は秋以降の政局安定には「連立が必要」であるとの見解も示し、「特に申し上げませんが、だいたいだれでも分かっていると思います」と含みを持たせた。石破首相へのアドバイスの有無を問われると「あります」と答え、その内容や首相の反応については直接的な言及を避けつつも、「その問題(石破おろし)については、森山幹事長に委ねていると思います」と述べ、石破政権の存続において森山裕幹事長が重要なキーマンであることを示唆した。
専門家の懐疑的見方と政権運営の課題
一方で、番組にゲスト出演したジャーナリストの後藤健次氏は、山崎氏の指摘に対し懐疑的な見方を示した。後藤氏は「なかなか厳しいのではないか。石破さんの意欲がそこまであるかどうか、まだそこははっきりしない」と述べ、石破首相が山崎氏が言うような強い意志を持って2027年まで政権を維持しようとしているのか疑問を呈した。
後藤氏は、政権を維持するためには「連立をきちんと組んで政権の体制ができないと、今年いっぱいですら(政権維持は)危うい状況」であると指摘。石破首相自身も、今年の秋の臨時国会くらいまでは政権維持を考えているかもしれないが、その先の具体的な戦略や戦術まで考えが及んでいるかは不透明だとの認識を示した。その上で、「その時に、森山さんがどういう立場でいるかも大きいと思う」と述べ、9月はじめにまとまる参院選総括後、自身の責任について明らかにするとしている森山幹事長の動向が、今後の石破首相の政権運営を大きく左右するとの見解で締めくくった。
参考文献
- Yahoo!ニュース. (2025年8月23日). 山崎拓氏、石破首相続投の「本当の思惑」指摘「2027年問題、台湾有事を阻止したい」. https://news.yahoo.co.jp/articles/5d44529a38cfd471e6e4f5c3bec6d197623f4216