成功作の影で霞んだ続編:『ステイン・アライブ』が招いた賛否両論

映画史には、前作が大ヒットを記録しながらも、その続編が観客の期待を大きく裏切り、残念な評価に終わってしまった作品が数多く存在します。特に、ディスコブームを巻き起こした伝説的作品『サタデー・ナイト・フィーバー』の続編、『ステイン・アライブ』は、その典型的な例と言えるでしょう。今回は、この期待外れの続編がなぜ生まれ、どのような評価を受けたのかを深掘りします。

ディスコブームを牽引した名作の続編

1977年に公開された『サタデー・ナイト・フィーバー』は、若者の葛藤と情熱をディスコミュージックに乗せて描き、全世界的なディスコブームを巻き起こしました。ジョン・トラボルタはこの作品で一躍スターダムにのし上がり、彼の演じたトニー・マネロは多くの人々の記憶に刻まれました。その輝かしい成功を受け、1983年に公開されたのが続編『ステイン・アライブ』です。本作では、トニーがブロードウェイのミュージカルスターを目指す新たな道のりが描かれ、監督・脚本にはまさかのシルヴェスター・スタローンがクレジットされ、彼自身もカメオ出演しています。

『ステイン・アライブ』でブロードウェイの夢を追いかける主人公トニー・マネロを演じるジョン・トラボルタ。彼の情熱的なダンスシーンは、不評だった続編の中での見どころの一つです。『ステイン・アライブ』でブロードウェイの夢を追いかける主人公トニー・マネロを演じるジョン・トラボルタ。彼の情熱的なダンスシーンは、不評だった続編の中での見どころの一つです。

豪華スタッフ・キャストと裏腹な評価

シルヴェスター・スタローンという名匠の参加と、前作に引き続き主演を務めるジョン・トラボルタ。この豪華な顔ぶれは、公開前から大きな注目を集めました。しかし、蓋を開けてみれば、本作の評判は前作とは対照的に散々なものでした。ジョン・トラボルタは、その年の「最低」の映画を表彰するゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)で主演男優賞に選ばれてしまうという屈辱を味わいます。映画評論家たちからも、その内容に対して厳しい意見が相次ぎました。

失われた青春群像劇の輝き

『ステイン・アライブ』がこれほどまでに低評価を受けた最大の理由は、前作『サタデー・ナイト・フィーバー』が持っていた切なくも爽やかな青春群像劇の魅力が失われてしまった点にあります。続編では、主人公トニーがブロードウェイでの成功を夢見る姿が描かれるものの、作品全体にどこかギラギラとした、軽薄で浅い雰囲気が漂い、前半は彼の周囲で起こる痴話喧嘩が延々と続く展開に終始します。観客は、前作で共感したトニーの人間的な成長や苦悩を期待していただけに、このストーリーラインの薄さに失望を隠せませんでした。

唯一無二の見どころ:ジョン・トラボルタのダンス

作品全体としては失敗作と評されがちな『ステイン・アライブ』ですが、それでもなお一見の価値があるポイントが存在します。それは、ジョン・トラボルタが披露する後半10分間のミュージカルシーンです。彼の情熱的でダイナミックなダンスパフォーマンスは、作品の不評を覆すほどの圧倒的な存在感を放ち、そのシーンを見るためだけにこの映画を観る価値があると言われるほどです。トラボルタのスターとしての輝きは、このシーンにおいて確かに健在でした。

映画の続編は、前作の成功という重圧と、新たな物語を創造する難しさという二つの課題に直面します。『ステイン・アライブ』は、そのジレンマの犠牲となった一例と言えるでしょう。大衆の期待と作り手の思惑が交錯する中で、いかにしてオリジナルの精神とクオリティを保ち続けるか。これは、映画製作における永遠の課題なのかもしれません。

参考文献