日本の少子化対策は「的外れ」か?出生数激減の真因は20代の「未婚化」

日本の深刻な少子化問題に対し、政府は多額の予算を投入し続けています。しかし、その努力にもかかわらず、出生数の減少は止まるどころか、加速の一途をたどっています。独身研究家の荒川和久氏はこの状況を「的外れな少子化対策」が引き起こした結果だと指摘。特に、政府の給付政策が「子育てコストのインフレ」を招き、結果として経済的に余裕のある世帯でなければ結婚や子を持つことが困難な社会を生み出していると警鐘を鳴らしています。本記事では、最新の人口動態データに基づき、日本の出生数減少が抱える本質的な課題と、誤解されがちな「晩婚化」の実態について深く掘り下げていきます。

日本の深刻な少子化と向き合う家族のイメージ日本の深刻な少子化と向き合う家族のイメージ

少子化対策の予算増も虚しく、出生数減少は止まらない

婚姻数と出生数の減少は止まる気配がありません。2025年5月までの人口動態速報によると、5カ月間の累計で婚姻数は前年比4.3%減、出生数は3.8%減と厳しい数字が発表されています。このままの傾向が続けば、2025年の年間出生数は65万人台にまで落ち込む可能性も指摘されており、日本の将来に暗い影を落としています。

この出生数減少の最大の要因は、婚姻数の減少にあります。近年、政治家やメディアもこの本質的な問題にようやく目を向け始めましたが、その深刻さが十分に認識されているとは言えません。婚姻数が増加しない限り、あるいは減少を食い止めない限り、出生数が回復することはありません。世界的に出生率が低い韓国や、実質出生率が1.0を下回った中国でも、婚姻減が少子化の主要な原因となっています。特に20代の婚姻減は世界的な潮流であり、日本も例外ではありません。

「子育てコストのインフレ」が結婚・出産を遠ざける

独身研究家の荒川和久氏は、現在の少子化対策が「的外れ」であると断言します。特に、政府が推進する給付政策は、皮肉にも「子育てコストのインフレ」を引き起こしていると分析。保育料や教育費の負担を軽減するための給付が増える一方で、それらのサービスを提供する側の価格が上昇し、結果として子育てにかかる総費用が高騰する事態を招いています。

この「子育てコストのインフレ」は、経済的な余裕がない世帯にとって、結婚や出産へのハードルを一層高くしています。荒川氏は、給付政策が結果的に「お金持ちしか結婚し子を持つことができない状況」を生み出していると指摘し、真に効果的な少子化対策とは、経済的格差に関わらず全ての世帯が安心して子育てできる環境を整備することにあると訴えています。

40代の出生数が20代を逆転?「晩婚化」の誤解

2024年の人口動態概数では、さらに衝撃的なデータが発表されました。20代前半(20〜24歳)の出生数4万2754人に対し、40代前半(40〜44歳)の出生数が4万3463人となり、初めて40代前半の出生数が20代前半を逆転したのです。しかし、これは「40代の出生率が増えた」というポジティブな晩産化の傾向を示すものではありません。その背景にあるのは、20代前半の婚姻数の激減と、それに伴うこの年代での第一子出産数の減少です。

「晩婚化が進んでいる」という意見がいまだに聞かれますが、これは実態と異なる誤解であると荒川氏は指摘します。年代別の初婚率を見ると、男女ともに20代の初婚率が極端に減少していることが明らかです。特に2013年から2023年の期間において、その減少は急激です。一方で、35歳以降の初婚率が増加しているわけではないため、全体としての「晩婚化」は起きていないと言えます。女性に関しては、2003年から2013年にかけてわずかな晩婚化の傾向が見られましたが、2023年には元の水準に戻っています。20代は男女ともに最も結婚意欲が高い年代であり、この時期に未婚のまま過ごしてしまうと、そのまま「生涯非婚」へとつながりやすくなる深刻な実態が浮き彫りになっています。

結論:少子化問題解決には20代の「未婚化」への対応が急務

日本の出生数減少は、単なる晩婚化や出産年齢の上昇といった表面的な問題ではなく、20代の婚姻数の激減、すなわち「未婚化」が本質的な原因であることが明らかになりました。専門家の分析が示すように、安易な給付政策は子育てコストを押し上げ、かえって結婚・出産のハードルを高める可能性があります。

今後、日本が少子化のトレンドを反転させるためには、現状の「的外れな」対策を見直し、20代の若者が安心して結婚し、子育てできるような社会経済的な環境を整備することが不可欠です。経済的安定、キャリア形成と育児の両立支援、そして子育て世代への真の支援策など、多角的な視点から本質的な課題解決に向けたアプローチが求められています。


参考文献