外国人観光客の民泊利用実態:晴海フラッグと山手線沿線、ウーバーイーツ配達員が見た真実

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第114回

東京の都市風景は常に変化し、新たなトレンドや社会現象を生み出しています。特に、外国人観光客による「民泊」の利用実態は、日本の不動産市場や地域経済に大きな影響を与える注目のトピックです。2021年の東京オリンピック選手村跡地に開発され、2024年に入居が始まったばかりの「晴海フラッグ」は、投機目的での購入や外国人観光客による民泊利用の噂が絶えません。しかし、実際に民泊で外国人観光客はどの街を利用しているのでしょうか?ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員として活動し、ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長を務める渡辺雅史氏が、日々の配達で足を使って稼いだリアルな体験談とデータに基づき、その真実を徹底解剖します。

晴海フラッグの「民泊疑惑」とウーバーイーツの現実

晴海フラッグは、販売開始当初に数十倍から数百倍という驚異的な抽選倍率を記録し、大きな注目を集めました。その背景には、東京オリンピック選手村としてのブランド価値に加え、将来的な資産価値上昇への期待がありました。しかし、「投機目的で購入する人が多く、実際に入居する人は半分程度」という見方も存在し、夜間には明かりが少ない部屋が多いことから、「日本を訪れる外国人観光客が民泊として利用している」という噂も囁かれています。

この噂の真偽を検証する上で、ウーバーイーツの配達データは非常に興味深い洞察を提供します。晴海フラッグは、マンション群の中心にある「ららテラス」を除けば、店舗がほとんどありません。また、外食に出かけるには地下鉄勝どき駅までかなりの距離があるため、住民がウーバーイーツを頻繁に利用する傾向にあります。

東京・晴海フラッグの夜景:多くの部屋が夜間も消灯し、投機目的や民泊利用の可能性を示唆東京・晴海フラッグの夜景:多くの部屋が夜間も消灯し、投機目的や民泊利用の可能性を示唆

ウーバーイーツ配達員にとって、晴海フラッグへの配達は諸刃の剣です。配達依頼自体は多いものの、飲食店が集中する都心部とは異なり、商品を届けた後に次の受け取り先がすぐ近くにあるケースは稀です。勝どき駅周辺の飲食店から晴海フラッグへ商品を届けた後、再び飲食店のある勝どき駅まで戻る必要があり、この非効率さが配達員にとって「稼ぎの悪い場所」となる原因です。そのため、晴海フラッグへの配達を断る配達員は少なくありません。

しかし、筆者である渡辺氏は、「あとでこの連載で愚痴ればいい」という信条のもと、舞い込んだ依頼は可能な限り受けるようにしています。この積極的な姿勢が、晴海フラッグと勝どき駅周辺を何度も往復する中で、民泊利用の実態に関する貴重な「現場データ」を収集する機会となっています。

ウーバーイーツ配達員が見た「晴海フラッグ民泊」の真偽

長年のウーバーイーツ配達経験を持つ渡辺氏は、配達先での外国人観光客の民泊利用を判別するための明確な基準を持っています。具体的には、ウーバーイーツに登録されているニックネームが日本人とは異なるセンスのものであったり、建物名の指示が漢字やカタカナ表記ではなくアルファベットで書かれている場合、外国人観光客の民泊である可能性が高いと判断できます。さらに、インターホン操作に慣れていないため、建物入口の自動ドアの解錠に時間がかかることも、民泊利用者の特徴の一つとして挙げられます。

これらの判別基準に基づき、渡辺氏が晴海フラッグでの配達経験を振り返ると、「外国人観光客の民泊だと感じた配達は数えるほどしかない」という驚くべき結論に至ります。一般的に広まっている「晴海フラッグが外国人観光客の民泊として多く利用されている」という噂とは、大きく異なる現場の現実が浮き彫りになったと言えるでしょう。もちろん、実際に居住している住民の方々がどう感じているかは別の問題であり、日本人観光客による民泊利用の識別は難しいため、正確な全体像を把握するには限界があります。しかし、第一線の配達員としての経験に基づくこの証言は、非常に説得力のある情報です。

外国人観光客が実際に利用する民泊エリアとは?

では、晴海フラッグではなく、外国人観光客は東京のどの地域で民泊を利用しているのでしょうか?渡辺氏が日々の配達を通じて「外国人観光客の民泊利用が多い」と感じる場所は、意外なエリアに集中しています。

それは、「山手線の駅まで徒歩圏内の雑居ビル」です。しかし、新宿、渋谷、池袋といった主要なターミナル駅周辺ではなく、御徒町、日暮里、巣鴨といった、より落ち着いた、しかし交通の便が良い下町やビジネス街に近いエリアが頻繁に利用されているとのことです。これらの地域は、主要観光スポットへのアクセスが容易でありながら、比較的宿泊費が抑えられる可能性があり、また生活感のある日本の雰囲気を体験したい外国人観光客にとって魅力的な選択肢となっているのかもしれません。

結論

ウーバーイーツ配達員というユニークな視点から得られたデータは、これまで漠然と語られてきた外国人観光客の民泊利用に関する「噂」に対し、具体的な現場の声を提示してくれました。晴海フラッグにおける外国人観光客の民泊利用は、少なくともウーバーイーツの配達データからは非常に限定的であるという事実。そして、実際に多くの外国人観光客が利用しているのは、山手線沿線の御徒町、日暮里、巣鴨といった、中心部から少し離れた雑居ビルであるという知見は、日本のインバウンド観光戦略や都市計画を考える上で貴重な情報源となるでしょう。現場のリアルな声に耳を傾けることで、私たちはより正確な現状認識と、それに基づいた効果的な対策を講じることが可能となります。

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