欧州連合(EU)から離脱するという英国民の民意が示された。
英下院総選挙は、ジョンソン首相率いる与党保守党が、過半数を大幅に上回る議席を得て圧勝した。英国の2020年1月末のEU離脱は決定的となった。
ジョンソン首相は「新たな国民の民主的な負託を受けた」と勝利を宣言した。英国は16年の国民投票以来、混乱が続いていたが、安定した政権基盤を生かしてEU離脱のプロセスを着実に進めてもらいたい。
日本政府は、合意なき離脱の回避を歓迎している。菅義偉官房長官は記者会見で、日本企業の経済活動への影響が最小限になるよう英、EUに引き続き働きかけていく考えを示した。
英議会は、ジョンソン政権とEUがまとめた離脱協定案と関連法案を可決し20年1月末の離脱が実現するが、それで全てが終わるわけではない。
英、EUは激変緩和のため、20年末まで経済関係を現状維持する「移行期間」に入る。並行して英EUは自由貿易協定(FTA)に合意する必要がある。
ジョンソン首相は移行期間の延長を求めないとしているが、EUがスイスやカナダなどと通商協定を結んだ際には数年から10年を要した。20年末までの妥結は非常に困難との見方が強い。
FTAが結ばれなければ、英EU貿易に世界貿易機関(WTO)のルールが適用され、関税などが発生する。
このような「クリフエッジ」(崖っぷち)は、日本企業の活動や世界経済に支障を来す。回避してもらわなければならない。ジョンソン首相は、20年末の期限を延長してでもFTA締結に向けて交渉する必要がある。
日本も、英国との経済関係を安定させなければならない。安倍晋三首相は13日の講演で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、「昨日総選挙が行われた英国からも強い関心が示されている。TPPは21世紀の経済ルールを世界に広げる野心的な取り組みであり、英国が加盟するのであれば心から歓迎する」と述べた。
TPPを含め、主要国の一員である英国との関係を日本が深めていくことは、経済上も安全保障上も有意義である。日EU関係を重視しつつ、日英の戦略的連携も深化させる契機としたい。