愛知県蒲郡市で3人の尊い命が失われた土砂崩れから、1年という月日が流れました。この悲劇で両親と弟を亡くした鋤柄尚美さん(48)は、自らが生き残ったことへの深い後悔を抱えながらも、同じような災害に直面する可能性がある人々へ、「早めの行動」の大切さを伝え続けています。未曾有の自然災害が頻発する現代において、鋤柄さんの経験は私たちに貴重な教訓を与えています。
愛知県蒲郡市を襲った悲劇:両親と弟を失った一瞬
2024年8月27日午後10時過ぎ、蒲郡市竹谷町大久古の住宅地を突如、土砂崩れが襲いました。鋤柄さんの木造2階建ての自宅は、濁流と土砂に押し潰され、同居していた家族5人が巻き込まれる事態に。鋤柄さんは当時の状況を「寝る前でスマホを少し触っていたんですけれど、逃げようとした瞬間に屋根に押しつぶされてしまった。本当に一瞬でした」と振り返ります。
愛知県蒲郡市の土砂崩れ現場で手を合わせる鋤柄尚美さん。家族3人を失った悲劇から1年が経ち、早期避難の重要性を訴える。
懸命な救助活動が行われたものの、鋤柄さんの両親である定夫さん(当時78)と真知子さん(当時70)、そして弟の求さん(当時32)の3人が亡くなるという痛ましい結果となりました。鋤柄さん自身と妹も負傷しましたが、「後ろに1秒でも身をひかなかったら、完全に屋根に押しつぶされていた」と、九死に一生を得た瞬間の恐怖を語ります。
ハザードマップ外の悲劇と「家族会議」の悔恨
この土砂崩れについて、県や市が行った調査では、「大量の水によって、土砂が土石流の形で高速で斜面を流れた」と結論づけられました。しかし、その大量の水の発生源については依然として不明のままです。さらに現場は、土砂災害ハザードマップ上では「土砂災害警戒区域」の対象外であり、発生当時、大雨警報や土砂災害警戒情報も発表されていませんでした。
こうした状況下で、鋤柄さんの胸には深い後悔の念が刻まれています。土砂崩れがあった日の夜、鋤柄家では避難の必要性について家族会議を開いていたといいます。「台風が来るのが3日後だったので、『一晩様子を見てから、明日の朝の状況で(行政などに)言おうか』と結論が出た」と鋤柄さんは明かしました。
「自身のカン」を信じる勇気:命を守るための教訓
鋤柄さんは、当時の状況を振り返り、自らの教訓として重要なメッセージを訴えかけます。「山の状態がおかしくなっていたのも分かったので、その時点で自身の“カン”みたいなものを信じて、早めに行動することが大切だったなと」。ハザードマップや行政からの情報には限界があり、長年その地に住む住民だからこそ気づく異変、つまり「自身の直感」を信じることの重要性を痛感しています。
この悲劇を経験した鋤柄さんは、「あの時、逃げる勇気が必要でした」と語り、私たちに早期避難の意識を促します。「誰の身に降りかかることかも分からない。うち(のケース)があったからこそ、『逃げよう』と思ってくださる方たちがいれば、(亡くなった)3人も浮かばれるのかなと」。自然災害の脅威が増す中、鋤柄さんの言葉は、一人ひとりの防災意識を高め、命を守るための行動を促す重い問いかけとなっています。
結論
愛知県蒲郡市で発生した土砂崩れから1年。犠牲となられた方々への追悼とともに、遺族である鋤柄尚美さんの言葉は、私たちに改めて自然災害への備えと「早期避難」の重要性を教えてくれます。公的な情報だけでなく、「自身のカン」を信じ、勇気を持って行動する。この教訓を胸に刻み、来るべき災害に備えることが、かけがえのない命を守る第一歩となるでしょう。
参考資料
- FNNプライムオンライン: 蒲郡市土砂崩れから1年…家族3人失った遺族が語る「早めの行動」の大切さ