米ハドソン研究所が中国の「抗日勝利」主張を「虚偽」と断罪

米国主要研究機関であるハドソン研究所がこのほど、中国政府が開催する「抗日戦争勝利記念式典」を「歴史を歪曲(わいきょく)し、事実を捏造(ねつぞう)した虚構の政治宣伝である」と厳しく非難する報告書を発表しました。この報告書は、中国共産党軍が日本と戦って勝利したとされる戦闘は「皆無に近い」とし、その「抗日勝利」の主張は「虚偽」であるとまで断じています。ワシントンに拠点を置くこの有力シンクタンクの指摘は、国際社会における中国の歴史認識に対する議論を再燃させる可能性があります。

「究極のフィクション」と題された報告書

ハドソン研究所が公表した報告書は「中国の第二次大戦での勝利パレードは究極のフィクション」と題されており、同研究所中国部のマイルズ・ユー部長が執筆しました。ユー氏はカリフォルニア大学で博士号を取得したベテランの中国研究者であり、第一次トランプ政権ではポンペオ国務長官の中国問題顧問を務めた経歴を持ちます。現在も米海軍士官学校の教授を兼任しており、ハドソン研究所がトランプ政権に極めて近いことから、その政策提言は米国政府の意向を反映することも多いとされています。この報告書は、中国の歴史解釈に対して専門的な視点から疑問を投げかけるものです。

中国の記念式典と国際的な宣伝活動

中国政府は、日本が降伏文書に署名した翌日である9月3日に、北京の天安門広場で対日勝利の記念式典を軍事パレードとともに開催する予定です。今回は戦後80周年を特に強調し、国際的な宣伝活動を展開しており、ロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記ら他国の首脳が参加を表明しています。このような大規模な記念式典を通じて、中国は自国の国際的影響力と歴史的「正当性」をアピールしようとしています。

ハドソン研究所が指摘する「歴史の歪曲」

ハドソン研究所の報告書は、中国共産党の「抗日勝利」主張について、以下の骨子を指摘しています。

  • 共産党の「厚顔なウソ」: 中国共産党軍が日本軍の主要な敵として日本の侵略と戦い、勝利したという主張は、共産党を美化するための「厚顔なウソ」であると批判しています。
  • 国民党軍の主戦: 1937年から45年まで実際に日本軍と戦った主要な勢力は、蒋介石(しょうかいせき)率いる国民党軍であり、総計350万人もの死傷者を出しました。一方で、共産党軍は延安(えんあん)地区に引きこもり、日本軍とはほとんど戦闘を行わなかったとされています。
  • 「百団大戦」の虚偽性: 共産党が日本軍との戦闘として大々的に宣伝する「百団大戦」においても、実際の日本側の死傷者は約500人程度に過ぎず、共産党が発表する4万6千人殲滅(せんめつ)という数字には根拠がないと結論付けています。
  • 共産党軍の低い被害: 共産党の八路軍は日本軍との戦闘が少なかったため、被害も極めて少なく、戦死が確認されている軍幹部は左権(さけん)将軍わずか1人しかいないと指摘しています。

北京の天安門広場で行われた軍事パレード。中国の対日戦勝記念式典と政治宣伝の象徴。北京の天安門広場で行われた軍事パレード。中国の対日戦勝記念式典と政治宣伝の象徴。

結論

ハドソン研究所の報告書は、中国政府が対日戦勝記念式典を通じて展開する歴史認識と政治宣伝に対し、厳しい批判と疑問を投げかけています。特に、第二次世界大戦における中国共産党の役割を過大評価し、国民党軍の功績を軽視している点を「歴史の捏造」と断罪することは、国際的な視点から見た歴史の客観性を求める重要な提言と言えるでしょう。このような分析は、国際政治における歴史認識問題の複雑さと、それに伴う地政学的な影響を理解する上で不可欠です。

参考資料:Yahoo!ニュース