フジテレビ、旧経営陣に50億円の損害賠償請求:中居正広氏トラブル対応巡る任務懈怠訴訟

フジテレビは、同局の港浩一前社長と大多亮元専務に対し、計50億円の損害賠償を求める訴訟を提起しました。これは、タレントの中居正広氏と女性アナウンサーとの間で発生したトラブルへの対応を怠ったことが原因とされています。異例ともいえる高額な賠償請求の背景には何があり、法的にはどのような意味を持つのでしょうか。レイ法律事務所の河西邦剛弁護士がこの事案について解説しました。フジテレビによる提訴の動き自体は、株主総会前の6月5日に既にリリースされており、河西弁護士は今回の提訴をその実行と認識し、驚きはなかったと述べています。しかし、この度、具体的な請求金額が初めて明らかにされた形です。

フジテレビの港浩一前社長と大多亮元専務の姿。50億円の賠償請求を巡る訴訟の当事者として注目される。フジテレビの港浩一前社長と大多亮元専務の姿。50億円の賠償請求を巡る訴訟の当事者として注目される。

フジテレビ提訴の背景と法的な妥当性

フジテレビが発表したリリースによると、今回の提訴は、港前社長と大多元専務が以下の点を怠ったことによる損害への賠償を求めるものです。

  1. 報告を受けた事案について事実関係の調査を怠った点。
  2. 調査した事実関係を踏まえ、専門的な助言を収集した上で原因を分析し、適切な対策を検討・実行することを怠った点。
  3. フジテレビの内規であるコンプライアンス及びリスクの管理等に関する規程に従い、コンプライアンス等担当役員に指示して対策チームを設置することを怠った点。

これらの任務懈怠がフジテレビに損害を与えたとして、会社法423条1項に基づき損害賠償請求を行っています。河西弁護士は、このうち「1.事実関係の調査」と「3.内規に基づく対策チーム設置」が裁判における最大のポイントだと指摘します。特に、現場のアナウンサーから中居氏とのトラブルについて報告があったにもかかわらず、十分な事実関係調査を怠った点は動かしがたい事実であるとし、また、社内規定が存在したにもかかわらずそれに違反して報告や対策を怠った点は、裁判で任務懈怠が認定されやすい要素であると説明しました。

50億円賠償請求の根拠と過去の事例

50億円という請求金額について、河西弁護士は「法律的には違和感はない」との見解を示しています。企業が旧経営陣を相手に数百億円規模の賠償を求める訴訟が過去に複数存在するためです。裁判所が今回、港前社長と大多元専務に会社法上の任務懈怠責任があり、そこから因果関係のある損害が発生したと認定した場合、その賠償額は数百億円、場合によっては数千億円、あるいは数兆円に及ぶ判決が出されるケースも歴史上存在します。このことから、フジテレビが請求する50億円は、法的観点から見れば妥当な範囲内であると専門家は分析しています。

フジテレビが旧経営陣への提訴にあたり発表したリリースにおける重要ポイントをまとめた図。任務懈怠の内容が示されている。フジテレビが旧経営陣への提訴にあたり発表したリリースにおける重要ポイントをまとめた図。任務懈怠の内容が示されている。

結論

フジテレビが旧経営陣に対し50億円の損害賠償を請求した今回の訴訟は、企業における経営陣の責任の重さと、コンプライアンスおよびリスク管理の重要性を改めて浮き彫りにするものです。中居正広氏と女性アナウンサーを巡るトラブルへの対応不備が、これほどの大規模な法的紛争へと発展した事実は、企業統治のあり方に対する社会の厳しい目を反映していると言えるでしょう。今後の裁判の行方は、日本の企業法務や芸能界におけるガバナンスの議論に大きな影響を与える可能性があります。

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