職場の人間関係は、多くのビジネスパーソンにとって最も大きな悩みの種の一つです。精神科医・産業医として23社の社員のメンタルヘルスケアに携わる尾林誉史医師によると、面談者の半数以上が職場内の人間関係でストレスを抱えているといいます。上司、同僚、後輩との付き合い方に疲弊し、気持ちよく仕事ができないと感じている方も少なくありません。本記事では、尾林医師の新著『精神科医が教える 休みベタさんの休み方』から、周囲に振り回されず、苦手な人と適切に向き合うための具体的な対処法をご紹介します。
職場に潜む「厄介な人々」:具体的なタイプとその影響
オフィスには、実に多様な「クセのある人たち」が存在します。彼らとの接触は、日々の業務に大きな負担をもたらし、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、以下のようなタイプが挙げられるでしょう。
- マウントを取ってくる人
- 権威をちらつかせ、高圧的な態度を取る人
- 意地悪な言動で周囲を不快にさせる人
- 自分の都合ばかり優先し、他者の迷惑を顧みない人
- やたらと大声で話し、周囲の集中力を乱す人
- 人の電話を盗み聞きするなど、詮索好きな人
- 我が道をいく孤立主義者(ゴーイングマイウェイの人)
これらの「苦手な人」との毎日の接触は避けがたく、どのように接すれば良いか頭を抱える状況に陥りがちです。
精神科医が推奨する対処法:心の中で「丁寧にディスる」
尾林医師は、苦手な人との距離感を保ちつつ、心の健康を守るための独特な方法を提案しています。それは、「心の中で一度、丁寧にディスる」というものです。具体的なイメージとしては、以下のようなフレーズを心の中で唱えることを推奨しています。
- 「ご自身がどんなことをしているのか、認識する能力がないんですね」
- 「今の世の中に合わせることが、おできにならないでしょう」
- 「もう本当に生きている価値があるんだかないんだかわからない方ですね」
職場の人間関係に悩むビジネスパーソンが、苦手な同僚や上司との適切な距離感を保ち、ストレスを軽減する方法を考える様子
このように心の中で相手を「丁寧にディスる」ことで、自身のネガティブな感情を一度吐き出し、気持ちを切り替える効果が期待できます。そして、その感情にとらわれすぎず、さっぱりと次の行動に移ることが重要です。
なぜ「悪口」ではなく「丁寧なディスり」なのか?
「ディスる」行為は、基本的に推奨されるものではありません。公の場で他者の悪口を言ったり、心の中でいつまでも相手への不満を募らせたりすることは、結局のところ自分の精神状態を悪化させます。例えば、「あいつはバカだ」「最低の性格だ」といったきつい言葉は、最終的に自分の心に跳ね返り、不快な気分や表情を作り出すことにつながります。周囲の人々も、悪口を聞かされて楽しいわけではありません。
尾林医師が提案する「心の中で丁寧にディスる」は、このような一般的な悪口とは一線を画します。これは、他者に直接危害を加えることなく、内面で感情を整理するための個人的な心理的防御メカニズムです。これにより、ストレス解消を図り、負の感情に支配されることなく、自身の心の健康を保ちながら仕事に取り組むことができるのです。
まとめ
職場の人間関係の悩みは、仕事のパフォーマンスだけでなく、自身のメンタルヘルスにも深く影響します。精神科医・産業医の尾林誉史医師が提案する「心の中で丁寧にディスる」という方法は、苦手な人との向き合い方を見直し、ストレスを軽減するための実践的なアプローチです。この心理的なテクニックを活用し、周囲に振り回されることなく、毎日気持ちよく仕事ができるよう、ぜひ心の健康を守る一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考文献
- 尾林誉史 (2025). 『精神科医が教える 休みベタさんの休み方』.
- Yahoo!ニュース (2025年8月31日). 「精神科医が教える「心の中で、ていねいにディスる」という最高のストレス対策」. https://news.yahoo.co.jp/articles/cb51ca915900422aca3f74fbf03d2d4bd5f8feef