自民党内では、石破茂首相に対する退陣要求の声が日に日に高まり、その焦点は総裁選挙の前倒し実施を巡る激しい水面下の攻防へと移っている。9月2日に開催される両院議員総会で参院選の総括が了承された後、党は総裁選前倒しの意思確認手続きを本格的に開始する予定だ。これは事実上、現職の石破首相に辞任を求める動きであり、その行方は日本の政局に大きな影響を与えるだろう。
総裁選前倒し決定プロセスの詳細と「記名式」の波紋
自民党総裁選の前倒し実施は、党所属国会議員295人と都道府県連代表47人の合計342人の過半数、すなわち172人からの要求があれば決定される。過去に例のないこの異例の事態に対応するため、総裁選挙管理委員会(委員長・逢沢一郎衆院議員)は、前倒しを求める意思表示の方法について協議を重ねた。その結果、議員は「記名式」で意思表示を行うことになり、署名・押印した書面を委員会に提出する必要がある。書面提出の期限は9月8日が見込まれており、各議員にとっては重い決断を迫られることになる。
議員が直面する「踏み絵」:各派閥の動向とプレッシャー
この「記名式」での意思表示は、党内では「踏み絵」と例えられ、多くの議員がその重圧に直面している。ある旧安倍派の衆院議員は、記名することで石破政権に対する明確な反旗と見なされることへの「怖さ」を語る。特に当選回数が5回程度で大臣候補と目される議員には、出世への影響を考慮した強いプレッシャーがかかっているという。地元選挙区の県連が前倒し賛否で意見が割れている場合、議員自身の判断が地元と異なることで、次期選挙での議席が危うくなる可能性も指摘されている。しかし、参院選での敗北責任は重大であるとの認識から、前倒しを支持する声も根強く、旧安倍派内では複数議員が集まって「前倒し賛成」の意思確認を行う動きが見られる。
「石破おろし」を加速させる動きと派閥の思惑
旧茂木派のある衆院議員によると、旧茂木派、安倍派、そして麻生派や旧岸田派の一部では、総裁選前倒しへの賛成の声が急速に高まっているという。賛否は拮抗しているものの、「石破首相にNOを突き付ける」という空気感が党内に広がっていると指摘する。当初、「記名式」での意思表示は「石破おろし」に加わったことが明確になるため、前倒しが過半数に達しなかった場合の人事面での不利な扱い、いわゆる「出世に響く」ことを恐れ、反石破派に不利になるとの見方もあった。しかし、これに対抗して反石破派の議員らは、旧派閥単位や当選回数の同期など、様々な単位で集会を開き、総裁選前倒しに向けて結束を強めている。むしろ「記名式」であるがゆえに、旧派閥の意向に背けば明白になるため、結果的に前倒しを支持する議員が増える可能性も出てきている。
自民党内で総裁選前倒しを求める声が高まる石破茂首相の姿
特に、旧安倍派には安倍晋三元首相が強く推していた高市早苗元総務大臣、旧茂木派には派閥を率いていた茂木敏充元幹事長といった、総裁への意欲を燃やす大物が控えている。これにより、一時解散したはずの派閥が、それぞれの候補を擁立する動きの中で、事実上「復活」したかのような様相を呈している。
結論:総裁選前倒しを巡る攻防の行方と政局への影響
自民党内で進行中の総裁選前倒しを巡る攻防は、単なる首相の交代問題に留まらず、党内の力学、派閥政治の根深さ、そして議員一人ひとりの政治的判断が試される重要な局面を迎えている。記名式による意思確認は、各議員にとって「踏み絵」となり、その選択が出世や政治生命に直結する可能性を秘めている。高市早苗氏や茂木敏充氏といった有力者の動向も相まって、自民党の内部対立は激しさを増すばかりだ。この総裁選前倒しが実現するかどうかは、今後の日本政治の方向性を大きく左右するだろう。
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