サントリー新浪前会長が辞任、サプリメント巡る捜査で鳥井社長「信頼回復に尽力」

サントリーホールディングスは2日、記者会見を開き、新浪剛史代表取締役会長の辞任を発表しました。この決定は、新浪氏が購入したサプリメントに関する警察の捜査を受けてのもので、同社は事態を重く受け止めています。鳥井信宏社長は会見の冒頭で、「皆様にご心配、ご迷惑をおかけすることを心よりお詫び申し上げます」と深々と頭を下げ、企業としての信頼回復に向けた強い決意を示しました。

新浪前会長辞任の背景とサントリーの対応

新浪前会長の辞任に至る経緯は、8月22日に同氏から「警察による捜査が行われた」との報告が会社にあったことから始まります。サントリーホールディングスはこの報告を受け、ガバナンス上極めて深刻な事案であると認識。直ちに外部弁護士を起用し、新浪氏へのヒアリングを実施しました。ヒアリングの結果、新浪氏からは、自身が「適法である」との認識のもとに購入したサプリメントに関して捜査が実施されたとの説明があったと鳥井社長は述べました。現在も警察当局による捜査が継続中であるとの認識を示しています。

経営への影響と今後の体制

今回の事態がサントリーの経営全体に及ぼす影響について問われた鳥井社長は、「まずは消費者の皆様から様々なご指摘をいただくでしょうし、業績にも影響が出る可能性もあると考えている」と率直に認めました。その上で、「全社一丸となって信頼回復に取り組んでいく」と強調し、企業としての責任を果たす姿勢を示しました。後任の人事については、これまで代表取締役会長を二人体制で務めていた佐治信忠氏が、当面は単独で会長職を担うことになると説明し、新体制での安定した経営を追求する方針を明らかにしました。

記者会見での緊迫:サプリメント名の公表拒否

記者会見の場では、ある記者がサプリメントの名称に関する質問をした際に、一際緊張が高まりました。記者は、「辞任理由を記した書類の最後に『同氏が購入したサプリメントは当社グループの商品ではありません』と明言されている。新浪氏からサプリメント名を聞いているはずだが、なぜ今回の会見で公表しないのか。仮に公表できないとしても、フェイクニュースや噂が一人歩きしてしまうため、せめて何の効果があるサプリメントなのか教えてほしい」と強く迫りました。

サントリーホールディングス 鳥井信宏社長、会見で謝罪サントリーホールディングス 鳥井信宏社長、会見で謝罪

これに対し、山田賢治副社長は、「新浪氏から2回にわたるヒアリングを実施し、そのサプリメントに関する知り得る情報はもちろんあった」と前置きしつつ、「申し訳ないが、捜査の最中であるため控えさせていただきたい」と公表を拒否しました。さらに、同副社長は「サントリーの代表取締役会長の辞任という会見でサプリメントに言及することは、万が一弊社の製品であると誤解される方を憂慮し、事実としてそうではない旨を書き添えさせていただいた」と、サントリー製品との混同を避けるための配慮があったことを説明しました。

記者はさらに追及し、「サントリーではない他のメーカーのサプリメントに疑いをかけられる可能性は考えなかったか」と質問。山田副社長は「申し訳ありません。それに関しましては、そのサプリメントが誰もが知るようなものではなかったため、そうした配慮については考慮の外になっていた」と回答し、会見は終わりました。

今回のサントリー新浪前会長の辞任は、日本を代表する企業におけるガバナンスと企業倫理の重要性を改めて浮き彫りにしました。サントリーホールディングスは、消費者や関係者の信頼を回復するため、透明性のある情報公開と経営改革への継続的な取り組みが求められます。

参考文献