トランプ氏、インドの関税ゼロ提案を「遅すぎる」と拒否:SCOサミットでの印露中接近の波紋

ドナルド・トランプ前大統領が、インドからの関税ゼロ提案に対し「遅すぎる」と拒否し、同国の対米貿易不均衡とロシアからの多大な石油・軍事製品購入を激しく批判した。この発言は、中国・天津で開催された上海協力機構(SCO)サミットにおいて、インドのナレンドラ・モディ首相、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平国家主席が会談した直後に行われたもので、国際社会における米印関係の緊張と、変動する多国間協力の構図を浮き彫りにしている。

トランプ氏、SNSでインドを厳しく批判

トランプ前大統領は9月1日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、アメリカとインドの貿易交渉におけるインド側からの関税ゼロ提案があったことを明かした。しかし、その提案に対して「もう遅い。数年前に行うべきだった」と述べ、一段と批判を強めた。彼はまた、「インドは石油と軍事製品の大半をロシアから購入しており、アメリカからの購入はごくわずかだ」と主張し、インドの外交政策と貿易慣行に対する不満を露わにした。この発言は、アメリカの同盟国であるインドが、ウクライナ侵攻後のロシアとの経済関係を維持していることへの、トランプ氏の根強い反感を反映していると見られる。

上海協力機構サミットでの印露中首脳会談

トランプ氏のインド批判の投稿は、中国の天津で開かれた上海協力機構(SCO)サミットの直後に発表された。このサミットでは、インドのモディ首相、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席が一堂に会し、和やかに言葉を交わす様子が映像で報じられた。この会談は、主要な国際機関の一つであるSCOの枠組みの中で行われ、3カ国間の連携強化を示すものとして注目された。国際政治の舞台でインドがロシアや中国と接近する中、アメリカのトランプ氏がインドへの批判を強めたことは、現在の複雑な国際情勢を象徴する出来事と言えるだろう。

2025年9月1日、中国の天津で開催された上海協力機構サミットにて、和やかに会談するインドのモディ首相、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席。トランプ前大統領の批判が報じられる中で、3カ国の接近が注目される。2025年9月1日、中国の天津で開催された上海協力機構サミットにて、和やかに会談するインドのモディ首相、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席。トランプ前大統領の批判が報じられる中で、3カ国の接近が注目される。

米印関係の冷却化とトランプ外交の影響

インドとアメリカの関係は、トランプ前大統領の在任中にすでに冷え込みを見せていた。トランプ政権は、ウクライナ戦争中にロシア産原油を大量に購入し続けたインドに対し、追加関税を50%に引き上げる措置をとった経緯がある。さらに、トランプ氏がインドとパキスタンの停戦を自身の功績だと主張したことも、モディ首相に不快感を与えたとされている。このようなトランプ氏の強硬な貿易・外交姿勢は、アメリカと対立する国同士の連携を促進し、長期的には世界におけるアメリカの影響力低下を招きかねないとの指摘も出ている。「冷戦期以来の3国再接近」と評されるインド、ロシア、中国の関係強化は、こうしたアメリカの一国主義的な外交政策への反動として捉えることもできるだろう。

貿易不均衡に対するトランプ氏の主張

トランプ氏は、長年にわたる米印間の貿易不均衡についても繰り返し不満を表明している。彼は「多くの人は理解していないが、アメリカはインドにほとんど輸出していない。インドはアメリカに巨額の輸出をしている」と述べ、この一方的な貿易関係が続いていることを強調した。さらに、「アメリカはインド製品の最大の顧客だが、アメリカはインドにほとんど何も売っていない。貿易不均衡が何十年も続いている。その理由は、インドがアメリカに世界で最も高い関税を課してきたからだ。アメリカ企業はインド市場に参入できなかった。完全に一方通行の惨事だった」と糾弾し、インド市場へのアクセス障壁が問題の根源にあると主張している。

モディ首相が語る印露協力の深化

一方、モディ首相はSCOサミットの傍らで行われたプーチン大統領との会談について、自身のX(旧Twitter)アカウントで発信した。「あらゆる分野での協力を深める素晴らしい会談だった」と評し、会談が生産的であったことを強調している。具体的な議論の内容としては、「貿易、肥料、宇宙、安全保障、文化など、すべての分野において二国間協力を深める方法について議論した」と述べており、ロシアとの多岐にわたる協力関係をさらに発展させる意向を示唆した。これは、アメリカの批判にもかかわらず、インドが独自の外交路線を堅持し、多極的な国際関係構築を目指している姿勢を示している。

トランプ前大統領によるインドへの貿易批判と、上海協力機構サミットでの印露中首脳会談は、国際政治の複雑な潮流を映し出している。アメリカの「アメリカ第一主義」的な強硬外交が、インドのような伝統的なパートナー国をロシアや中国に接近させる可能性を秘めており、今後の国際秩序の形成にどのような影響を与えるかが注目される。米印関係の行方と、拡大する多国間協力の動きは、地政学的バランスの変化を示す重要な指標となるだろう。


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