カンボジア政府、在日反体制派への「越境弾圧」をHRWが告発 – 日本政府に人権保護を要請

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、カンボジア政府が日本に住む反体制派のカンボジア人に対し、デモ活動などの政治活動をやめるよう嫌がらせを行っていると発表しました。この「国境を越えた弾圧」は、日本国内の活動家だけでなく、カンボジアに残る家族にも圧力をかける形で展開されており、HRWは日本政府に対し、在日カンボジア人の権利保護を強く求めています。

カンボジア国旗、人権弾圧問題に直面する国の象徴カンボジア国旗、人権弾圧問題に直面する国の象徴

HRWの調査で明らかになった弾圧の実態

HRWは今年4月から7月にかけて、日本に在住するカンボジア人23人から聞き取り調査を実施しました。調査対象者のほとんどは、反体制派の集会やデモに参加しており、日本で難民認定を申請中の人々です。彼らの証言から、カンボジアに住む家族の元に警察や軍高官が訪れ、日本での活動を停止するよう圧力をかけられた経験が多数報告されています。この調査結果は、カンボジア政府による監視と威圧が国境を越えて及んでいる深刻な現状を示唆しています。

具体的な嫌がらせ事例と警告

HRWが発表した報告書では、複数の具体的な事例が挙げられています。

  • 2021年のデモ参加者への警告: 日本で反政府活動のデモに参加したカンボジア人に対し、SNS(交流サイト)に投稿された動画を見たというカンボジアの警察が、その親戚宅を訪問。「活動をやめるよう伝えてほしい。もし続ける場合は帰国すれば逮捕する」と明確に警告しました。
  • 2018年移住者への説得: 2018年に日本に移住し、野党の支持集会などに参加してきた別の人物も、カンボジアの地方行政関係者が親戚宅を複数回訪問し、日本での活動をやめさせるよう説得工作が行われたと証言しています。
  • 2023年のSNS批判女性への罰金: 2023年にSNSで政府批判を行った女性は、カンボジアで欠席裁判のまま1000万リエル(約37万円)の罰金を命じられました。これは、海外からの批判に対しても法的な圧力をかける動きとして注目されます。

独裁体制下の監視拡大と日本政府への提言

HRWによると、事実上の独裁体制が続くカンボジアでは長年、野党党員や反体制派が恣意的に逮捕されるなどの人権侵害が続いています。しかし、近年ではその監視対象が日本を含む海外在住のカンボジア人にも拡大していると指摘されています。

HRWは日本政府に対し、この「越境弾圧」の深刻さを認識した上で、以下の措置を講じるよう求めています。

  1. 相談窓口の設置: 在日カンボジア人が被害を安心して相談できる窓口を設けること。
  2. 通報者の保護: 通報者が強制送還や引き渡しから保護される仕組みを確立すること。

国際社会における人権尊重の原則に基づき、日本政府には在日カンボジア人の表現の自由と人権を守るための具体的な行動が期待されています。

結論

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが告発したカンボジア政府による在日反体制派への「越境弾圧」は、国際的な人権保護の観点から看過できない問題です。日本に居住する人々が自らの意見を表明する自由は、いかなる政府によっても侵害されるべきではありません。日本政府は、国際社会の一員として、また人権尊重を掲げる国家として、在日カンボジア人の安全と権利を保護するために速やかに、そして具体的な措置を講じるべきです。これにより、自由と民主主義の価値が守られ、安心して暮らせる社会の実現に貢献することが求められます。

参考文献