【ワシントン=池田慶太、ロサンゼルス=後藤香代】米国のトランプ大統領は2日、犯罪対策の一環として、米国第3の都市のイリノイ州シカゴに州兵を派遣すると明言した。民主党支持が強い都市に軍隊を送り込み、連邦政府の直接的な支配を強める狙いがあるとみられる。
トランプ氏はホワイトハウスで記者団に、シカゴでは犯罪が蔓延(まんえん)していて「まさに地獄だ」と指摘し、「私にはこの国を守る義務がある」と州兵派遣を約束した。シカゴは統計上、暴力犯罪が減少傾向だが、SNSでは「シカゴは間違いなく世界最悪の最も危険な都市だ」と主張した。
犯罪対策を理由とする州兵派遣は、首都ワシントンに続く措置だ。シカゴはワシントンと同じく民主党の支持が厚く、移民への寛容政策を取る「聖域都市」の一つで、トランプ政権の強硬な不法移民摘発にも反対している。州兵派遣は、民主党が知事や市長を握る都市の統治に連邦政府が「介入」するための口実との見方が強い。
州兵は各州の管轄下にあり、州知事の要請に応じて配備されるのが通例だ。イリノイ州のJ・B・プリツカー知事は2日の記者会見で、「軍隊を派遣する必要がある緊急事態はない」と反発し、法的措置で対抗する考えを示した。
一方、カリフォルニア州の連邦地裁は2日、不法移民摘発強化への抗議デモを受けてトランプ氏がロサンゼルスに派遣した州兵の一部活動について、違法だとして差し止めを命じた。州兵の即時撤退を求めるギャビン・ニューサム知事の主張を一部認めた形だ。
地裁は、ロサンゼルスやその周辺地域で連邦当局の摘発作戦を支援した州兵の活動は、軍の国内法執行を制限する「民警団法」に違反すると判断した。「大統領を最高指揮官とする国家警察が創設されようとしている」と懸念も示した。