韓国で外国人観光客へ憎悪犯罪、30代男性に実刑判決

韓国を訪れていた中国と台湾の観光客に対し暴力を振るった30代の韓国人男性に、実刑判決が下されました。ソウル西部地方法院は、この男性の犯行を「中国人に対する敵対感に基づく憎悪犯罪」と認定し、その深刻な事態が改めて浮き彫りになりました。今回の判決は、外国人観光客への不当な暴力行為に対し、韓国司法が厳正な姿勢で臨むことを示すものです。

バス内で中国語を理由に暴行:中国人観光客への加害

2024年4月1日、30代の男性Aは、バス内で中国語で話す中国国籍の20代女性観光客BさんとCさんに対し、暴行を加えた容疑で起訴されました。Aは、Bさんらが騒がしく会話していたという理由で激昂。バス降車後も約70メートルにわたって追跡し、被害者の母親を性的に侮辱する中国語の罵倒を浴びせた上で、腰を足で蹴りつけました。この事件は、単なる口論を超えた一方的な暴力行為であり、被害者に深い精神的・身体的苦痛を与えました。

台湾人観光客を中国人誤認し襲撃:食堂での凶行

さらにAは同月6日、ソウル麻浦区の飲食店で、台湾国籍の30代男性Dさんと20代女性Eさんに暴力を振るった容疑も持たれています。Aは、彼らの会話を聞いて中国人と誤認し、店外で待ち伏せ。彼らが店を出てきたところで、あらかじめ用意していた焼酎の瓶でDさんの頭を殴りつけるという凶悪な犯行に及びました。さらに、制止に入った食堂の従業員を押して転ばせ、その従業員の太ももや膝に噛みつくなど、エスカレートした暴行行為を見せました。

外国人観光客への暴行事件で実刑判決を言い渡した韓国の裁判所のイメージ。外国人観光客への暴行事件で実刑判決を言い渡した韓国の裁判所のイメージ。

裁判所の厳正な判決と量刑理由

ソウル西部地方法院刑事7単独の馬晟寧部長判事は、Aに対し懲役10月の実刑を宣告しました。裁判部は、「普段から中国人に対する敵対感を持っており、実際に中国人を狙った憎悪犯罪とみられる」と指摘。その上で、「厳しい処罰が必要な点、被害者たちは訳もわからず被告人から暴行を受け、被告人の厳罰を訴えている点などは被告人に不利な状態」と明確に判示しました。ただし、Aが自身の過ちを深く悔い、事件が一部メディアで報道された後に自首した点を斟酌し、最終的な量刑が決定されました。

今回の判決は、外国人観光客に対する無差別な暴力、特に憎悪犯罪として認定された事例として、韓国社会に警鐘を鳴らすものです。国籍や文化的背景を理由にした差別的行為は決して許されるものではなく、被害者の尊厳と安全を保障するための司法の役割が改めて強調されました。

参考資料