ヤマハ、MotoGPサンマリノGPで新型V4エンジンを実戦初投入へ

ヤマハ・モーター・レーシングは、来る9月12日から14日にミサノで開催されるサンマリノGPにおいて、開発を進めてきた新型『V4』エンジンを搭載したプロトタイプマシンを初めて実戦投入すると正式に発表しました。この歴史的な一戦では、長らく新エンジンの開発に携わってきたMotoGPテストライダー、アウグスト・フェルナンデスがワイルドカードで出場します。これは、公の場でヤマハの新型V4エンジン機がその姿を現す初めての機会となり、MotoGP界に大きな注目を集めています。

「直列4気筒」から「V4」へ、開発の次段階へ移行

ヤマハは、来季の本格投入を見据えて慎重に進めてきた新型『V4』エンジンの開発を、ついに実戦テストの段階へと移行させます。8月25日の発表によれば、サンマリノ&リビエラ・ディ・リミニGPにて、このV4エンジンを搭載した新型M1プロトタイプを走行させる計画が進行中です。

現在、ヤマハの参戦機であるYZR-M1は、MotoGPにおいて唯一の直列4気筒(直4)エンジン搭載マシンとして知られています。しかし、他の主要メーカーのエンジンはV4レイアウトで占められており、その優位性が指摘されてきました。V4エンジンは、その特性上、高い加速性とコーナリングからの優れた脱出速度を発揮するとされており、近年では直4エンジンよりも圧倒的な実績を上げています。かつてスズキが直4エンジンで参戦していた2022年、アレックス・リンスがGSX-RRでバレンシアGPを制したのが、直4エンジンの最後の優勝とされています。

新型V4エンジンを搭載したヤマハのプロトタイプマシン。サンマリノGPで実戦投入される。新型V4エンジンを搭載したヤマハのプロトタイプマシン。サンマリノGPで実戦投入される。

このような状況下で、ヤマハが水面下でV4エンジンを開発していることは、2024年頃からMotoGPファンの間で囁かれ始めていました。参戦チームであるモンスター・エナジー・ヤマハは、SNS上でV4エンジンのエキゾーストノートや、車体の一部を公開するなど、その存在を匂わせ続けてきました。さらに今年6月には、オランダGPのテストでV4テスト車両の写真がスクープされ、従来のYZR-M1とは明らかに異なるフェアリングやエキゾーストの処理が発覚し、開発が着実に進んでいることが明らかになっていました。

MotoGPで唯一の直列4気筒エンジン機YZR-M1。他社がV4を導入する中、ヤマハの新たな挑戦が始まる。MotoGPで唯一の直列4気筒エンジン機YZR-M1。他社がV4を導入する中、ヤマハの新たな挑戦が始まる。

そしてついに、この新型V4マシンが、9月12~14日のサンマリノGPにて公式に実戦投入されることとなります。ヤマハによれば、これまで数多くのプライベートテストで改良が重ねられてきました。直近では、ミサノ・ワールド・サーキットでアウグスト・フェルナンデスとアンドレア・ドビツィオーソが開発プログラムを消化し、開発責任者のパオロ・パヴェシオ マネージングディレクターは自身のSNS上で「次のステップに踏み出す」と明言し、この実戦投入が開発の大きな節目であることを示唆していました。

テストライダー、アウグスト・フェルナンデスがワイルドカード参戦

今回の実戦投入では、MotoGPテストライダーのアウグスト・フェルナンデスがワイルドカードとして参戦し、新型M1で初めてのグランプリに挑むことになります。パヴェシオ氏は、このV4エンジン実戦投入について「重要なプレビューであり、将来に向けたコミットメントの証である。我々は最高の結果を目指し、努力を続ける」とコメントし、ヤマハの未来に対する強い意欲を示しています。

サンマリノGPでの走行結果は、今後のヤマハのV4エンジン開発方針を大きく左右する重要な一戦となることは間違いありません。長年の直4路線から新たな挑戦へと踏み出すヤマハと、その新型V4エンジンのパフォーマンス、そしてアウグスト・フェルナンデス選手の走りに、世界中のヤマハファン、そしてMotoGPファンが熱い視線を注ぐでしょう。

参考資料