アニメ作品において、主要キャラクターが次々と命を落とし、世界そのものが消滅する「全滅エンド」は、時に強烈な印象を視聴者に残します。1980年代の『伝説巨神イデオン』のような作品がその代表例ですが、2000年代以降は、直接的な「死」の描写を避けつつも、より切なく、深い余韻を残すような形でこの種の結末を描く作品が増加しました。これらの作品は、単なる悲劇を超え、心に長く響く感情を呼び起こします。
『最終兵器彼女』コンパクトBlu-rayパッケージ。悲劇的な純愛と全滅エンドを描き、深い余韻を残すアニメ作品。
命の終わりを間接的に示唆し、心に残る悲哀を誘う『少女終末旅行』
2017年に放送されたアニメ『少女終末旅行』(原作:つくみず)は、文明が崩壊し、生き物がほとんど死滅した世界を舞台に、少女チトとユーリが半装軌車ケッテンクラートで旅をする物語です。戦闘シーンは少なく、廃墟を巡るささやかな日常が描かれています。最終回では、巨大な潜水艦で平和な時代から戦争に至る歴史を知り、残された人間が自分たちだけであることを悟ります。そして二人は再び終わりのない旅に出る形で幕を閉じました。食料や燃料も十分ではない状況は、彼女たちが緩やかに死へ向かう未来を暗示し、視聴者に切なく悲しい感情を深く残しました。冷静なチトと天真爛漫なユーリという対照的な性格が物語に温かさを与え、絶望的な世界での何気ない会話が多くの視聴者を魅了しました。
アニメオリジナル展開が衝撃を与えた『Rewrite』の「全滅エンド」
恋愛ゲームが原作のアニメ『Rewrite』は、2016年から2017年にかけて放送されました。文明と緑の共存を目指す都市「風祭」を舞台に、主人公・天王寺瑚太朗が星の化身である少女・篝と出会い、彼女を狙う組織との争いに巻き込まれていく非日常的な物語です。2016年放送の第1期では、第8話からアニメオリジナルの展開が描かれ、注目を集めました。第1期の最終回では、人工物や生物を自壊させる「滅びの歌」によって篝の「鍵」の力が発動し、瑚太朗や主要キャラクターたちが巨大な木に飲み込まれてしまうという衝撃的な「全滅エンド」が描かれました。この結末は当時大きな驚きを持って受け止められ、複雑かつ重厚なストーリー展開と共に高い評価を得ました。翌年に放送された第2期は原作に沿った内容となっています。
これらの作品は、「全滅エンド」という共通のテーマを持ちながらも、それぞれ異なるアプローチで視聴者の心に深い感情の余韻を残しました。『少女終末旅行』のように直接的な死を描かずに滅びを暗示する手法や、『Rewrite』のようにアニメオリジナルの衝撃的な結末を提示する手法は、現代のアニメにおける「全滅エンド」の表現の多様性を示しています。これらの物語は、ただ悲劇で終わるのではなく、登場人物たちの生き様や、その終末が持つ意味を通じて、視聴者に深く考えさせる力を持っています。
参考資料
- 『少女終末旅行』
- 『Rewrite』
- 『伝説巨神イデオン』
- 『最終兵器彼女』