大阪・関西万博は、大屋根リングの建設費問題や埋め立て地からのメタンガス噴出事故など、開催前から様々な議論を巻き起こしました。一部では来場者の不満も報じられましたが、蓋を開けてみれば、多くの人々がこの国際イベントを心から楽しみ、当初の批判を乗り越える形で成功を収めたようです。本記事では、AERA 2025年10月20日号の視点も交え、万博がもたらした交流の価値と経済効果に迫ります。
国際交流が織りなす万博の真髄:米国パビリオンの体験
開催間もない5月の週末、米国パビリオンは宇宙ロケットの打ち上げを疑似体験できる目玉企画で長蛇の列をなしていました。記者と家族も1時間以上並び疲労が募る中、流暢な日本語を話す米国人スタッフとの思わぬ交流が生まれました。「どこから来たの? ぼくはバーモント州出身なんだけど、日本には『バーモントカレー』なるものがあるのを知ってびっくりしたよ」というたわいもない会話は、その国の人と個人的に触れ合った貴重な記憶として深く心に刻まれました。このような来場者と参加国スタッフとの直接的な交流こそが、万博が提供する真の価値であり、多様な文化や人々とのつながりを実感する機会となったのです。
大阪・関西万博のシンボルである大屋根リング。内部には約160の国や地域のパビリオンが立ち並び、来場者に深い感動を与えた
「いのち輝く未来社会のデザイン」:万博が掲げた理念
「万博」とは、地球規模の課題解決のために世界各地から英知が集まる場であり、人やモノが集まる一大イベントです。大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、いのちのつながりを再認識し、多様ないのちが共存・発展する持続可能な社会を国内外の参加者と共に「共創」することをその理念としました。この壮大なビジョンは、単なる展示会に留まらない、未来に向けたメッセージが込められていたことを示しています。
批判と成果:公費投入から経済波及効果まで
万博開催を巡っては、国と地方を合わせて3千億円を超える巨額の公費が投入される計画に対し、「成果は厳しく問われるべき」という批判の声も上がりました。開幕当初、4月の来場者数は1日あたり15万人を下回る日が続きましたが、5月の大型連休を境に徐々に増加傾向に転じ、9月の終盤には駆け込み需要で連日20万人を超える盛況ぶりを見せました。万博協会が目標とした総来場者数2820万人、そして運営費黒字の目安とされる一般来場者数2200万人(速報値)は9月28日に突破されたと発表されました。さらに、関西財界系シンクタンク「アジア太平洋研究所」は、万博による経済波及効果を約2兆7400億円と予想しており、経済的な側面からも大きな貢献があったと評価されています。
大阪・関西万博は、開催前の逆風にも関わらず、最終的には多くの人々に楽しみと感動を提供し、当初掲げた国際交流と共創の理念を実現しました。批判を乗り越え、経済的にも大きな波及効果をもたらしたその実績は、日本の国際的なプレゼンスを示す重要な機会となったと言えるでしょう。