2026年大河ドラマ「豊臣兄弟!」の主人公、豊臣秀長の知られざる功績と生涯

天下統一を成し遂げた豊臣秀吉。その偉業の陰には、常に寄り添い、支え続けた実弟・豊臣秀長の存在がありました。2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」では、この秀長が初めて主人公として描かれ、彼の知られざる激動の人生に光が当てられます。農民から身を起こし、兄と共に戦国の乱世を駆け抜けた豊臣兄弟が、いかにして天下を手中に収めたのか。新刊『450年前にタイム・スリップ! 豊臣兄弟と天下統一の舞台裏』(青春出版社刊)から、豊臣秀長が果たした重要な役割とその生涯を深掘りします。

2026年NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」で豊臣秀長役を演じる俳優・仲野太賀氏。2026年NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」で豊臣秀長役を演じる俳優・仲野太賀氏。

豊臣秀長とは?その生い立ちと秀吉との絆

豊臣秀長は、秀吉の3歳年下の弟とされています。生母は秀吉と同じ「仲(後の大政所)」ですが、父親については、彼女の再婚相手である「竹阿弥」とする説と、秀吉と同じく「木下弥右衛門」とする説が存在します。出生地は兄秀吉と同じ尾張国愛知郡中村(現在の愛知県名古屋市中村区)とみられており、同地の中村公園内にある豊國神社には「豊公誕生地之碑」が建てられ、秀吉の生誕地として知られています。

幼名を小竹(後に小一郎)といった秀長が9歳の頃、兄秀吉は家を出奔。郷里で農業を営んでいた小竹の人生が大きく変わったのは、20歳を過ぎた1561年のことでした。織田家の家臣・木下藤吉郎として帰郷した秀吉が、小一郎に織田家への奉公を勧めたのです。この時、秀吉は足軽頭程度の地位を得ており、地元で若者たちをスカウトするために戻ってきたと考えられます。小一郎は兄の誘いに応じ、武士の道を歩み始めました。

秀長を主人公にした堺屋太一氏のベストセラー小説『豊臣秀長』では、兄を助けることが仕官の主な動機とされていますが、幼い頃に別れた兄への純粋な兄弟愛だけであったかは定かではありません。もしかしたら、農村での生活に嫌気がさしていたのかもしれませんし、意外な出世欲を抱いていた可能性も捨てきれません。このように、兄秀吉の「影」のように生きた秀長という人物の動機や心情については、不明な点が多く、その生涯は歴史愛好家の間で様々な憶測を呼んでいます。

天下統一を支えた秀長の「影の功績」

織田家への仕官から数年間、20代前半の秀長の動向は明確ではありませんが、農民から武士へと転身し、軍事技術や武家の作法を習得する期間だったと推測されます。そして永禄9年(1566年)、織田信長が美濃攻めを本格化させた頃から、秀長は兄秀吉と共に頭角を現し、豊臣兄弟の目まぐるしい合戦の日々が始まります。

初期の活躍としては、織田家と美濃の斎藤龍興との戦いにおける墨俣城築城と防衛が挙げられます。秀吉が美濃勢を調略するため出向くことが多かったため、秀長は兄に代わって砦の留守居役を多く務め、その手腕を発揮しました。1568年、信長が斎藤龍興を破り、足利義昭を奉じて上洛戦に打って出ると、豊臣兄弟は南近江の攻略戦で重要な役割を果たしています。

さらに、1570年の朝倉攻めでは、同盟関係にあった浅井長政の裏切りにより織田軍が絶体絶命の窮地に陥ります。この時、秀吉は自ら殿(しんがり:撤退時の最後尾で敵の追撃を防ぐ役割)を務めると申し出ますが、秀長はさらにその殿を務めるよう命じられ、見事に生還しました。その後も、兄弟は姉川の戦いに参戦。浅井氏の居城である小谷城攻めでは、秀長が中心となって小谷城の郭の要衝を落とすなど、重要な局面で武功を立てています。また、その前の比叡山焼き討ちにも、兄と共に参加したとみられています。

兄秀吉が播磨・但馬攻略を任されると、秀長もこれに同行し、三木城の3年にわたる包囲戦に参加。対毛利の戦いとなった鳥取城攻めや、備中高松城の戦いにも加わるなど、兄の天下統一の道を影から支え続けました。秀長は、戦場での勇猛果敢な働きに加え、行政手腕や人心掌握術にも長けていたとされ、秀吉が不在の時や、複雑な交渉事が必要な場面で、その真価を発揮しました。彼はまさに、豊臣政権の屋台骨を支える、なくてはならない存在だったのです。

秀長が解き放つ「豊臣兄弟」の真実

豊臣秀長は、戦国の乱世を駆け抜けた兄・秀吉の陰に隠れがちでしたが、その生涯はまさに激動であり、その功績は豊臣家の天下統一に不可欠なものでした。戦場での活躍はもちろんのこと、政権運営における兄の補佐役としても絶大な信頼を得ていた彼の存在なくして、豊臣秀吉の栄光は語れません。2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」は、これまであまり知られることのなかった秀長の人間性、そして彼が兄と共に築き上げた「血の絆」の物語を深く掘り下げることでしょう。このドラマを通して、私たち日本の視聴者は、歴史の新たな側面を発見し、豊臣兄弟の真の姿に触れる貴重な機会を得ることになります。

参考文献

  • 『450年前にタイム・スリップ! 豊臣兄弟と天下統一の舞台裏』(青春出版社刊)