女優の古川琴音が、NHK連続テレビ小説『あんぱん』に出演することが発表された。古川が朝ドラに出演するのは、2020年度前期に放送された『エール』以来約5年ぶり、2回目となる。今回の『あんぱん』では、茶道を通じてヒロインののぶ(今田美桜)と出会い、その夫である嵩(北村匠海)とも交流を深めていく中尾星子を演じる。この役は、現在のやなせスタジオ代表である越尾正子さんがモデルとされており、物語の重要な局面でどのような役割を果たすのか、早くも視聴者の期待が高まっている。
NHK連続テレビ小説『あんぱん』のロゴマーク。古川琴音の出演発表で注目を集める新作朝ドラ。
古川琴音、『エール』以来2度目の朝ドラ出演
『あんぱん』で古川琴音が演じる中尾星子は、のぶが教える茶道の弟子として登場し、のぶだけでなく、やがて嵩とも深く関わっていくことになる。この設定から、彼女がやなせスタジオの越尾正子さんをモデルとしていることが強く示唆されている。物語の終盤に登場するキャラクターは、往々にして主要人物たちの新たな側面を引き出したり、物語全体のメッセージを次世代へと繋ぐ重要な役割を担うことが多い。
連続テレビ小説『エール』に出演していた頃の古川琴音。成長した華役として物語後半に登場し、視聴者の心を掴んだ。
物語の終盤を彩るキャラクターの役割
古川が初めて朝ドラに出演した『エール』でも、彼女は物語の後半で主人公・裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)の一人娘・華として登場した。思春期の華は、音楽に打ち込む両親とは異なり、自分の情熱を注ぐものを見つけられないことに悩みを抱えていた。彼女がオペラのオーディションを受ける音を家事で支えようとする姿は、両親の新たな「親としての顔」を浮かび上がらせた。古川は、この思春期特有の戸惑いやもどかしさを、どぎまぎとした言動や不安げに音を見つめる表情で見事に表現している。最終的に華は看護師としての道を見つけ、甘酸っぱい恋愛を経てロカビリー歌手の霧島(宮沢氷魚)と結婚するという、その人生の行く末は多くの視聴者に共感を呼び、見守られた。
また、2023年度前期に放送された『らんまん』においても、最終週に登場した藤平紀子(宮﨑あおい)は、それまでナレーションを務めていた人物が、万太郎(神木隆之介)の遺品整理を通じて彼の功績を後世に伝える重要な役割を担った。このように、物語の終盤に登場するキャラクターは、単なる脇役ではなく、主人公たちが築き上げてきたものを未来へと繋ぐ「橋渡し役」となることが多い。
中尾星子、アンパンマンの魅力を未来へ繋ぐ存在
『あんぱん』における中尾星子も、まさにそのような役割を期待されている。彼女は、いよいよ誕生するアンパンマンの魅力に早くから惹かれ、その世界観を深く愛するようになるという。これは、嵩(やなせたかし)が生み出した偉大な作品であるアンパンマンが、時代を超えて多くの人々に愛され、語り継がれていく過程を象徴する存在となることを示唆している。越尾正子さんが、嵩とのぶ(暢)の仕事を手伝い、特に暢の50代から70代までの老年期を間近で見てきた人物であるという事実は、中尾星子が二人の人生と作品の軌跡を深く理解し、未来へと繋ぐ存在となることを裏付ける。
越尾さんはかつてインタビューで、やなせが高知の名産である「小夏」という柑橘系の果物を手に取り、「正しい食べ方を教えてあげます」と包丁で皮をくるくるとリンゴのように剥き、「うちのかみさん(暢)は絶対正しい食べ方をしないで、みかんみたいに食べるんです」と話していたというエピソードを明かしている(※)。この心温まる逸話は、嵩とのぶの深い愛情とユーモアに満ちた関係性を物語っており、中尾星子がその二人から直接触れることになる豊かな人間性を予感させる。
結論
古川琴音演じる中尾星子が、嵩とのぶという偉大な夫婦の関係性に加わることで、どのような新しい人間模様が紡がれていくのか。そして、彼女の繊細かつ確かな演技力が、アンパンマン誕生の物語にどのような深みと感動をもたらすのか。今後の展開と古川の演技に大いに期待が寄せられる。