伝説的ベーシスト、アンソニー・ジャクソン氏が73歳で逝去:6弦ベースの革新者が残した遺産

現代エレクトリックベースの概念を再定義し、音楽界に計り知れない影響を与えた伝説的ベーシスト、アンソニー・ジャクソン氏が10月19日、73歳でその生涯を終えました。彼は単なる演奏者にとどまらず、従来の4弦の枠を超え、低音B弦と高音C弦を追加した革新的な6弦ベース「コントラバス・ギター」の考案者としても世界的に知られています。彼の逝去は、世界中の音楽コミュニティに深い悲しみと喪失感をもたらしています。

音楽界からの深い追悼の声

ジャクソン氏の訃報は、彼が愛用した楽器の製造元であるFodera Guitars社と、長年にわたり共に音楽を創造してきた著名なギタリスト、アル・ディ・メオラ氏によって公にされました。Fodera社は「最も先見的で影響力のあるベーシストの一人。彼のレガシーは、FoderaのDNAに深く刻まれています。あなたの貢献によって、ベースの世界は永遠に豊かになりました」と彼の功績を称え、深い追悼の意を表しました。また、アル・ディ・メオラ氏も「6弦コントラバス・ギターにおける彼の天才的な創造力は、現代音楽の形を根本から変えました」と述べ、その革新性を改めて強調しました。

革新的な6弦ベース「コントラバス・ギター」の発明

1952年6月23日に米ニューヨークで生まれたアンソニー・ジャクソン氏は、1970年代にセッション・ベーシストとして頭角を現しました。彼の最大の功績の一つは、音楽表現の可能性を飛躍的に広げた6弦ベース「コントラバス・ギター」の考案です。これは従来の4弦ベースに低音B弦と高音C弦を加えることで、より広範な音域と豊かなハーモニーを実現し、その後の多弦ベース文化の礎を築きました。彼はスラップ奏法のような派手なテクニックに頼らず、アンサンブル全体を支える深みのあるグルーヴ重視の演奏スタイルを確立し、多くの共演者から絶賛されました。

伝説的ベーシスト、アンソニー・ジャクソン氏(1998年撮影)。彼の革新的な6弦ベースが現代音楽界に与えた影響は計り知れない。伝説的ベーシスト、アンソニー・ジャクソン氏(1998年撮影)。彼の革新的な6弦ベースが現代音楽界に与えた影響は計り知れない。

幅広いアーティストとの共演、日本との深い絆

アンソニー・ジャクソン氏は、その長いキャリアにおいて数百枚ものアルバムと数千件に及ぶセッションに参加し、ジャンルを超えた数多くの著名アーティストと共演しました。ロバータ・フラック、チャカ・カーン、スティーリー・ダン、チック・コリア、アル・ディ・メオラ、ミシェル・カミロといった世界的スターたちの音楽を、その唯一無二のベースプレイで彩りました。

特に日本との関係は深く、1977年には深町純や日野皓正のアルバムに参加。その後も渡辺貞夫、渡辺香津美、今田勝など、日本のジャズ・フュージョンシーンを代表する多数のアーティストたちとの共演を重ね、日本国内でも絶大な人気を博しました。2000年代には矢野顕子のツアーに参加し、2010年代には上原ひろみとサイモン・フィリップスとの「ザ・トリオ・プロジェクト」で、その超絶技巧を支える強固な音楽的土台を築き上げました。

晩年の2017年以降は、脳卒中とパーキンソン病との闘病のため活動を休止。同年、上原ひろみ、サイモン・フィリップスとのトリオ公演を最後にステージを離れ、その後、病との長い闘いの末にこの世を去りました。

最後に

アンソニー・ジャクソン氏の逝去は、世界の音楽界にとって大きな損失です。しかし、彼が発明した6弦ベースと、生涯を通じて生み出した革新的な音楽は、今後も色褪せることなく、次世代のベーシストたちにインスピレーションを与え続け、現代音楽史にその名を永遠に刻み続けることでしょう。彼の残した偉大な遺産に心からの敬意を表し、安らかなご冥福をお祈りいたします。

参考資料

  • Rolling Stone Japan 編集部 (2024年10月20日). 「アンソニー・ジャクソンが73歳で逝去。6弦ベースの開拓者」. Yahoo!ニュース.