元衆議院議員で、国土交通大臣や自由民主党幹事長といった要職を歴任した石原伸晃氏が、29日に放送されたBS日テレの「深層NEWS」に出演し、現在の自民党における総裁選前倒しを巡る動き、通称「石破おろし」について見解を述べました。特に、若手議員時代に自身が「怖かった」と語る伝説の自民党幹事長の名前を告白し、その剛腕政治家としての記憶を鮮明に振り返りました。現在の党内情勢が緊迫する中、石原氏の発言は、長年の政治経験に裏打ちされた深い洞察を示しています。
自民党の重要ポストを歴任した石原伸晃氏の2023年6月時点の姿。
自民党総裁選前倒しを巡る党内情勢と石原氏・小林氏の見解
現在の自民党では、参議院選挙での大敗を受け、石破茂首相(党総裁)の続投に対し、総裁選の前倒し実施を求める声が強まっています。総裁選選挙管理委員会は27日、前倒しを求める国会議員には書面での署名・押印を求め、原則として党本部への本人持参を義務付ける形式を決定しました。この「石破おろし」の動きを公にする手法は、党内で反発の声もくすぶっていますが、意思確認は9月8日に行われ、結果は当日中に公表される予定です。
番組には、石原氏とともに昨年の自民党総裁選に出馬した小林鷹之・元経済安全保障相も出演しました。小林氏は総裁選選管の決定について、「決まったことなので従うだけ。政治家である以上、記名は当然だと思う」としつつも、「公表についてはどちらでもいいが、本来は党内で把握していればいい話ではなかったか」との私見を述べました。その上で、小林氏は参院選の総括が正式に発表される前に、石破首相が自発的に辞意を表明することに期待を表明。もし石破首相が辞任表明しない場合は、「私は(総裁選前倒し実施を求める書面に)署名します」と明言しました。
一方、石原氏は、署名した議員の名前が公表されることについて司会者から「誰が裏切り者かというように見えてしまう。ものが言えぬ空気を作っているのではないか」と問われると、「私はそういう考えではない」と否定しました。石原氏は、「政治家は代議士として、有権者の声を代議する立場で、その責任で今の石破政権をどう思うのかを示すべきだ。(名前を)書いて当たりですよ」と強く訴えました。さらに、「(前倒しの要求が過半数に達せず)万が一、石破や森山裕幹事長が残ったら、公認がもらえなくなるかもしれないとビクビクするような者は、議員を辞めたらいい」とまで言い放ち、現役議員としての覚悟を求めました。
石原氏が語る若手議員時代の経験と「怖かった幹事長」野中広務氏
石原氏は自身の若手議員時代の経験を振り返り、「国会議員は自分の意思を通さないと駄目だ。私は若いころ、ずっとそうやってきた」と語りました。そして、今回と同様に退陣要求にさらされた森喜朗内閣時代の2000年、党若手で結成した「自民党の明日を創る会」の活動を回顧しました。「『自民党の明日を創る会』を作って活動しましたが、正直、当時は本当に怖かったですよ」と述べ、その理由として当時の幹事長だった野中広務氏の名前を挙げました。
野中広務氏は、幹事長時代に党内に強い睨みを利かせ、その剛腕政治家としても広く知られていました。2018年1月に逝去された野中氏について、石原氏は「(野中さんは)森山さん(現幹事長)よりも、もっと怖い」と強調。若手議員たちが要請書などを手渡す際、「ビクビクしていた」当時の様子をありありと語り、その圧倒的な存在感を改めて示しました。石原氏の証言は、自民党の歴史と、その中で権力を握ってきた幹事長の役割の重みを浮き彫りにしています。
結論
今回の石原伸晃氏と小林鷹之氏の「深層NEWS」での発言は、現在の自民党が直面している総裁選前倒し問題と、それに伴う党内力学の複雑さを明確に示しました。特に石原氏が若手時代の経験と野中広務氏の強烈なリーダーシップに言及したことは、現在の「石破おろし」を巡る状況が、過去の政局とどのように異なるのか、あるいは共通する側面があるのかを考察する上で重要な視点を提供しています。政治家としての責任と覚悟が問われる中、自民党の動向は引き続き注目されるでしょう。