2025年9月3日、中国で開催された抗日戦争・反ファシスト戦争勝利80周年記念式典において、習近平国家主席を中心にロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩国務委員長が並び立つ姿は、世界中の注目を集めました。この光景は、習主席が今や米国に並ぶ覇権国として、新たな世界秩序を主導すると国内外に宣言する象徴的な場面として受け止められました。長らく習主席はプーチン大統領と共に、米国を混乱の原因とみなし、米国主導の一極体制を非難してきました。その上で、中国こそが米国に代わる信頼できるパートナーであり、真の多国間主義と自由主義経済秩序の守護者であると訴えてきたのです。
「米国優先主義」が招く西側世界の亀裂
過去とは異なり、習主席のこうした主張には、ある程度の説得力が伴うようになってきています。この変化をもたらす主要因の一つが、トランプ前米大統領の「米国優先主義」政策と、そこから生じた西側世界内部の亀裂です。トランプ大統領は第二次政権において、同盟国にも関税爆弾を浴びせました。特に欧州の防衛に関しては「勝手にやれ」という姿勢を示し、まだ十分な準備ができていない欧州が混乱に陥り、米国との間で軋轢が生じています。このような状況は、米国主導の同盟関係の信頼性を揺るがし、西側諸国間の結束に大きなひびを入れる結果となりました。
新興国も中露軸へ:広がる「修正主義」勢力
さらに、米中の間でバランサーの役割を自認してきたインドも、最近米国から50%という高率の関税を課される事態に直面しました。これを受け、インドのモディ首相は9月1日に天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議の際に、プーチン大統領の専用リムジンで50分間もの会談を行いました。これは、米国以外にもインドには別の選択肢があることを米国に誇示する場面として注目されます。同様に、トランプ大統領はブラジルや南アフリカの指導者とも衝突し、結果として彼らを習近平・プーチンの軸へと追いやる形となりました。こうした一連の出来事は、中国を中心とする「修正主義」的な代替勢力の主張に、これまで以上の力を与えることになっています。
2025年9月3日、中国の抗日戦争勝利80周年記念式典に出席したプーチン露大統領、習近平中国国家主席、金正恩北朝鮮国務委員長。中露朝の連帯を象徴する一枚。
規範よりも「力」が支配する国際秩序
この渦中で、もう一つ明らかになったのは、「規範基盤の国際秩序」の低下傾向です。アラスカでのプーチン大統領に対するトランプ大統領の手厚い歓迎、そして抗日戦争記念日とSCO首脳会議への出席を通じて、ロシアの国際的孤立はもはや完全に解けた様相を呈しています。例えば、今回のSCO首脳会議の合意文には、ウクライナ戦争に関する言及は一切ありませんでした。3年前には習主席がプーチン大統領に懸念を表明し、モディ首相も「今は戦争の時代ではない」と忠告したことを考えると、大きな変化です。これは、ロシアのウクライナ侵攻を国際法違反行為とみなすのではなく、国際政治で起こりうる一種の「ノーマルな行為」として受け止められつつあることを示唆しています。規範ではなく、「力」を前面に出す権力政治が、国際社会で容認されつつあるという現実が浮かび上がっています。
「修正主義」勢力の限界:明確な代替ビジョンの欠如
しかし、これら「修正主義」国の連帯は、勢力誇示にもかかわらず、米国主導ではない新たな二者択一の国際秩序のビジョンを明確に示すことはできていません。中国政府はSCO会議で「グローバルガバナンス構想」を打ち出しましたが、その内容は極めて理想的かつ非現実的なスローガンにとどまりました。習主席は演説で老子の「道」を語りながらも、数日後の軍事パレードでは中国の最新鋭兵器を誇示することで、「道」よりも中国の軍事力を前面に出す姿を見せました。これは、言葉と行動の間に矛盾を抱えていることを露呈しており、彼らの掲げる「代替秩序」の信頼性に疑問符を投げかけるものです。
それでは、これら「修正主義」国間の連帯を、私たちはどのように見るべきでしょうか。彼らは堅固な軸を形成しつつあるのでしょうか、それとも単なる便宜上の緩い連帯に過ぎないのでしょうか。この問いに対する答えは、米国をはじめとする西側諸国が、この新たな地政学的現実にどのように対応していくかと密接に関連する、極めて重要なものとなるでしょう。