米国任天堂(Nintendo of America)は、Nintendo Switchの改造サービス提供や海賊版ゲームの販売を通じて著作権を侵害していた個人および事業体に対し、断固たる法的措置を講じています。特に注目されるのは、改造ハードウェアの販売を手がけていた「Modded Hardware」社のオーナー、ライアン・デイリー(Ryan Daly)被告に対する訴訟で、2025年9月5日、連邦地方裁判所は同被告に200万ドル(約2億9,600万円)の損害賠償と永久的な事業禁止を命じる判決を下しました。この判決は、ゲーム業界における知的財産権の保護に対する任天堂の揺るぎない姿勢を示すものです。
「Modded Hardware」の広範な違法行為と市場への影響
Modded Hardwareは、任天堂が開発したNintendo Switchの海賊版対策を回避するためのメモリカード「MIG Switch」をはじめとする複数の改造ハードウェアや関連パーツ、さらには任天堂の人気タイトルの海賊版ゲームを販売していました。また、自身で改造を行うことが困難な顧客に対しては、郵送による改造代行サービスも提供し、広範な著作権侵害行為を展開していました。これらの違法行為は、任天堂の正規販売チャネルとゲームクリエイターの利益を著しく損ねるものであり、ゲーム市場全体の健全な発展を阻害する深刻な問題として認識されていました。
違法改造されたNintendo Switchで動作する海賊版ゲームのイメージ
訴訟に至る経緯と被告の態度変化
事態は2024年6月に動きました。当初、Modded Hardwareは違法行為の停止に一度は合意したとされていましたが、その後も運営を継続。これに対し、米国任天堂は2024年7月には2件の訴訟を提起しました。デイリー被告は当初、自らの不正行為を否定し、弁護士をつけずに裁判に臨む意向を示していましたが、後に方針を転換し、新たに弁護士を探していると伝えられました。しかし、米国任天堂はこれ以上の猶予を与えることなく、法的な手続きを進めることを選択しました。
地裁が下した「Modded Hardware」への厳罰判決
そして2025年9月5日、地裁はデイリー被告の一連の行為が米国任天堂に対し「重大かつ回復不能な損害を与えた」と認定。その結果、200万ドル(約2億9,600万円)という多額の損害賠償金の支払いを命じました。さらに、同社が運営していたウェブサイト(後継サイトを含む)については、ドメインの放棄と永久的な運営停止が命じられました。
判決はこれに留まらず、海賊版ゲームを搭載した改造コンソールやハードドライブ、クラウドサービスを含むすべての記録媒体に存在する著作権侵害素材やファイルの押収または物理的消去を要求。加えて、デイリー被告および関連者は、改造デバイスの入手、所有、アクセス、使用が全面的に禁止されました。また、いかなる形であれ改造デバイスまたはコンソールの創作・開発への協力、技術的文書の販売や配布、違法ツールの提供を目的としたウェブサイトの運営や支援、リンク掲載による利用者の誘導といった行為もすべて永久的に禁止されています。現在、Modded Hardwareのサイトはアクセス不可の状態となっています。
著作権侵害ツール「MIG Switch」と改造されたNintendo Switch本体
今回の判決は、単なる金銭的な賠償に留まらず、広範囲にわたる改造や海賊行為を事実上不可能にする厳格な措置を含んでおり、知的財産権侵害に対する任天堂の強固な姿勢を改めて世界に知らしめる結果となりました。これは、今後同様の違法行為を企てる者への明確な警告となり、正規のゲーム販売市場とクリエイターの権利保護に大きく貢献する重要な判例となるでしょう。
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