サントリーホールディングス(HD)会長を務めていた新浪剛史氏(66)がその職を辞したのは9月2日のこと。米国で違法な大麻成分を含む疑いのあるサプリメントを購入した件に関連し、福岡県警による家宅捜索を受けたことで、同社からの辞任要求に応じ、「迷惑をかけられない」との判断に至ったとされている。しかし、経済界の主要団体である「経済同友会」の代表幹事職、さらには政府の「経済財政諮問会議」や「新しい資本主義実現会議」といった要職については留任しており、その進退を同会に委ねた形だ。この異例の状況に対し、新浪氏の説明責任とリーダーシップの資質に疑念の声が上がっている。
新浪剛史氏:サントリーHD会長辞任後も経済同友会代表幹事を務める姿
CBDサプリ購入疑惑とその不透明な説明
新浪氏自身は会見で、問題となったサプリメント購入の違法性を否定している。しかし、国内でもCBD製品が販売されているにもかかわらず、なぜわざわざ海外で購入しようとしたのか、また、購入したはずのサプリメントを家族が勝手に廃棄したという経緯にも、多くの疑問が残されている。
海外での購入理由については、「米国の方が圧倒的に安いから」と説明があった。しかし、巨額の収入を得る立場にある人物の発言としては、その弁明は素直に受け入れがたく、むしろどれほどの頻度で大量購入をしていたのかという疑念を招くものだ。さらに「廃棄」に関しても、「送り主不明の荷物は家族が処分する取り決め」があったと説明したが、もしそうであれば、なぜ「自分が購入したサプリを知人に自宅に送るよう頼んだので、捨てないように」と家族に伝えていなかったのか、といった疑問が拭えない。いずれの点においても、納得のいく説明とは言い難く、その透明性の欠如が指摘されている。
財界の「ご意見番」としての整合性
新浪氏はこれまで、財界の重鎮として、他の企業の不祥事に対しては厳しく批判する姿勢を示してきた。特に、ジャニー喜多川氏による性加害問題が社会問題化した際には、旧ジャニーズ事務所のタレントを広告に起用している企業に対し、「チャイルドアビューズ(子どもへの虐待)を企業として認めることになる」とまで発言し、その舌鋒の鋭さは記憶に新しい。
しかし、今回自らにかけられた疑惑に関する説明からは、過去に見せたような“歯切れの良さ”は全く感じられなかった。この態度の差は、新浪氏の財界リーダーとしての資質に深刻な疑念を突きつけている。
ローソン社長時代の過去の疑惑再燃
新浪氏のリーダーシップに対する疑念は、今回のCBDサプリ問題が発覚する以前から存在していた。「週刊新潮」は2023年に、彼がサントリー社長に就任する前のローソン社長時代に生じていた複数の疑惑について報じている。特に、会社名義で購入したコンドミニアムの「私物化」疑惑や、その中で詳報された彼の「凄絶なパワハラ」は大きな問題として指摘されていた。
当時報じられたこれらの疑惑は、新浪氏の“裏の顔”を浮き彫りにするものであり、現在の状況と合わせ、改めてそのリーダーとしての適格性が問われている。
結論
新浪剛史氏がサントリーHD会長職を辞任しつつも、経済同友会代表幹事や政府の要職に留まっている現状は、彼に対する一連の疑惑と相まって、国民からの厳しい視線に晒されている。CBDサプリ購入に関する不透明な説明、そして過去に指摘された「私物化」疑惑や「パワハラ」問題は、財界の「ご意見番」として他の企業に厳しく責任を問うてきた彼自身の説明責任とリーダーシップの整合性を問うている。日本を代表する経済人としての新浪氏には、これらの疑惑に対し、より一層の透明性を持った説明が求められていると言えるだろう。
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