現代社会において、職業への関心は多岐にわたりますが、その中でも特に注目されるのが「社会からの信頼度」と「現役で活躍できる年齢」です。特に日本の政治を取り巻く環境では、「政治とカネ」を巡る問題が後を絶たず、国民の政治家に対する不信感は根深いものがあります。このような背景の中で、政治家がどの程度信頼されているのか、また、世界の主要国と比較して日本の政治や経済のリーダー層にどのような年齢的特徴が見られるのかを、統計データに基づき考察します。
世界的な意識調査から見えてくるのは、職種によって大きく異なる信頼の実態と、日本独自の「長老支配」とも言える高齢化の傾向です。
職業と社会の信頼:国際比較から見る日本の特徴
イプソス調査が示す信頼度の動向
フランスの世界的な調査会社であるイプソス社は、32カ国、21の職業を対象に、どのような職業が信頼されているかについての国際意識調査を実施しています。本稿では、主要国としてG7諸国と韓国を取り上げ、各国の職業別信頼度の順位を分析します。この順位付けは、「信用している」の回答率を「信用していない」の回答率で除した指標に基づいており、客観的な評価を試みています。
高い信頼を誇る職業:医師と科学者
国際調査の結果から、まず顕著な共通性として浮かび上がるのは、医師や科学者への信頼度が非常に高い点です。これは主要国に限らず、途上国を含む世界的な傾向であり、多くの国でこれらの職業が信頼度1位となっています。
ただし、主要国の中では、米国と韓国が医師の順位がそれぞれ4位、5位と比較的低くなっているのが特徴的です。米国では高額な医療費が敬遠される要因となっている可能性があり、韓国の医師に対する低い信頼度は、歴史ドラマに見られる宮廷内の医師の身分的な低さを想起させるものかもしれません。
信頼度最低の職業:政治家とSNSインフルエンサー
世界中で共通して信頼度が最低レベルにあるのが政治家です。世界32カ国中15カ国で政治家が最低ランクに位置しており、閣僚などの政治に絡む職種も同様に低い傾向が見られます。公務員については、政治家ほど信頼度が低くないことから、問題の根源は政治家個人や政治システムへの不信にあると推測できます。
日本では、近年の「政治とカネ」の問題や政治家の不祥事の頻発により、国民の政治家への信頼は地に落ちた感が否めませんが、これは世界共通の現象として捉える必要があります。例えば、ある首相が政治資金問題への国民の不信感を払拭できなかったと述べ、辞任を表明したとされる出来事のように、こうした問題が繰り返されるたびに信頼はさらに低下します。自民党がこの信頼をどのように回復させるかは、喫緊の課題と言えるでしょう。
政治家と並んで信頼度が低い職業として近年注目されているのが「SNSのインフルエンサー」です。世界14カ国で最低ランクとなっていますが、特に評判が低いのは先進国であり、途上国ではそれほど低くないという特徴があります。主要国では米国と韓国が下から2番目であるのを除くと、ほぼ全ての国で最下位となっています。ネット社会においてSNSインフルエンサーの影響力は増大していますが、彼らが必ずしも人々の信頼を得ているわけではないことを認識しておくべきです。
石破茂議員が第102代内閣総理大臣に選出された瞬間。政治家の信頼性と年齢層に関する議論の背景にある日本の政治状況を示す一枚。
日本の「長老支配」:政治と経済における高齢化の傾向
世界に類を見ない日本の「現役期間」の長さ
職業別の信頼度分析に加えて、もう一つの重要な側面が「年齢」です。統計データ分析家の本川裕氏が指摘するように、世界の中でも日本の政治家や企業経営者には高齢者が多いという傾向があります。各国別に「何歳まで現役と見なされるか」を調べた結果を見ると、日本は国のリーダー(政治家)も大企業のトップも、他のどの国よりも高年齢で、現役で働ける年数が長いという特異な状況にあります。
これは、日本の社会全体が高齢化していることに加え、終身雇用制度や年功序列といった日本型雇用慣行の影響、さらには経験や実績を重んじる文化が、指導層の高齢化を助長している可能性が考えられます。
高齢化がもたらす影響と課題
政治や経済のリーダー層の高齢化は、安定性や豊富な経験をもたらす一方で、いくつかの課題も内包しています。例えば、新しい技術や社会の変化への対応の遅れ、若年層の意見が政策に反映されにくい構造、さらには世代間のギャップ拡大などが挙げられます。イノベーションやダイナミズムが求められる現代において、指導層の高齢化は国の競争力や社会の活力を損なう要因となる可能性も指摘されています。
結び
本稿では、国際的な意識調査データに基づき、日本の社会における職業別の信頼度と、政治・経済リーダー層の年齢構成について考察しました。医師や科学者が高い信頼を得る一方で、政治家やSNSインフルエンサーへの信頼は世界的に低い水準にあり、特に「政治とカネ」問題は国民の不信感を募らせる大きな要因となっています。
また、日本独自の傾向として、政治家や企業経営者において「現役で活躍できる年齢」が国際的に見ても非常に長く、「長老支配」とも言える状況が明らかになりました。今後、日本の政治・経済が持続可能な発展を遂げるためには、国民の信頼回復に向けた透明性の確保と、多様な世代が活躍できるリーダーシップのあり方を模索していくことが不可欠と言えるでしょう。