名古屋主婦殺害事件:26年越しの逮捕劇、安福久美子容疑者出頭の深層

長年にわたり未解決だった「名古屋主婦殺害事件」は、発生から26年という時を経て、ついに新たな局面を迎えました。2025年10月30日、安福久美子容疑者(57歳)が自ら愛知県警西警察署に出頭し、事件は急展開を見せています。これは、被害者家族の深い悲しみと、警察の執念に満ちた捜査が実を結んだ瞬間であり、社会に大きな衝撃と関心をもたらしています。事件の背景には、容疑者の過去に秘められた「情念」が横たわっていると見られています。

過去の情念:喫茶店での別れと24年後の凶行

事件の遠因は、遠く1975年に遡ります。高度経済成長期が終わろうとしていたこの年、愛知県豊橋市内の昔ながらの喫茶店で、一組の若い男女が向き合っていました。男は私立大学の学生、女は受験浪人中の身でした。男が「やはり君の気持ちには応えられない」と告げると、女は突如号泣。周囲から見ればよくある痴話喧嘩に見えたかもしれませんが、男は困惑しつつも内心ではその様子に戸惑っていました。このときの情念が、24年後の凶行へと繋がっていくことになります。

名古屋主婦殺害事件で逮捕された安福久美子容疑者の高校時代の姿名古屋主婦殺害事件で逮捕された安福久美子容疑者の高校時代の姿

1999年11月13日:高羽奈美子さん殺害事件の惨劇

1999年11月13日の昼頃、名古屋市西区のアパートで、当時32歳だった主婦・高羽奈美子さんが何者かに刺殺されるという痛ましい事件が発生しました。全国紙デスクによると、犯行は当時わずか2歳だった奈美子さんの息子の目の前で行われたといい、奈美子さんは血まみれの状態で廊下にうつ伏せで倒れていました。

奈美子さんは1995年7月7日、11歳年上の高羽悟さん(69歳)と結婚。二人は不動産会社の同僚でした。悟さんの妹は奈美子さんについて、「家族思いの優しい方で、嫁と姑の関係も非常に良好だった。台所で母と楽しそうに料理をしたり、父の腰が悪い時には『一緒に接骨院に行きましょう!』と元気よく声をかけてくれる、気さくで良い子だった」と回想しています。仲睦まじい一家の日常は、この日突然、残酷に引き裂かれました。

名古屋主婦殺害事件の被害者、高羽奈美子さんと息子・航平さんの写真名古屋主婦殺害事件の被害者、高羽奈美子さんと息子・航平さんの写真

難航する捜査と残された「女」の証拠

犯人は犯行後すぐに逃亡しましたが、奈美子さんともみ合った際に手を負傷したと見られ、玄関先には血痕と靴跡が残されていました。目撃情報もあり、警察はDNA鑑定によって犯人の血液型がB型、性別が女、年齢層が40〜50代であると特定しました。これだけの証拠が残されていたことから、犯人の逮捕は時間の問題と思われましたが、捜査は想像以上に難航しました。

警察は奈美子さんの関係者を徹底的に調べ上げましたが、事件に繋がる情報は全く得られませんでした。以来、事件は長きにわたり未解決のまま推移し、被害者夫である高羽悟さんの「孤独な闘い」が続くことになります。

26年にわたる「孤独な闘い」:高羽悟さんの執念

事件発生から26年間、高羽悟さんは妻が殺害されたアパートの家賃を払い続け、その総額は2200万円を超えました。これは、犯行現場を保全し、いずれは犯人が捕まるという希望を捨てなかった彼の強い執念の表れです。悟さんは情報提供を求めるビラを配り続け、数多くのメディアからの取材も受け、事件の風化を防ぐために奔走しました。被害者家族のこの粘り強い活動が、事件解決への道を拓く一因となったことは間違いありません。

そして2025年:安福久美子容疑者、西警察署に出頭

そして26年の歳月が流れた2025年10月30日、一人の女が名古屋の西警察署に姿を現しました。それが、安福久美子容疑者でした。長らく未解決事件として社会に重くのしかかっていたこの事件は、容疑者の自ら出頭により、ついに解決へと大きく前進しました。これは、被害者家族の願いと、捜査当局の執念が実を結んだ瞬間であり、世間の大きな注目を集めています。

この事件の詳細は、「週刊文春 電子版」および11月6日(木)発売の「週刊文春」で詳しく報じられています。そこでは、「高校時代高羽悟さんに2度チョコ、大学でもフラれて号泣」「『鉛筆が当たって』息子の入学式で同級生保護者に激高」「夫は名古屋大学卒一流自動車部品メーカー勤務のエリート」「『私がいる間に絶対捕まえる』昨春赴任強面刑事の執念」といった多岐にわたるトピックが深く掘り下げられています。

参考資料

  • 週刊文春電子版
  • 週刊文春 2025年11月13日号
  • Yahoo!ニュース (記事元:週刊文春編集部)