三谷幸喜、俳優・清水尋也容疑者の逮捕に激怒 ― 日曜劇場『19番目のカルテ』再編集問題と脚本家の苦悩

人気脚本家である三谷幸喜氏が、9月6日放送の『情報7daysニュースキャスター』(TBS系)において、麻薬取締法違反の疑いで逮捕された俳優・清水尋也容疑者に対し、その怒りをあらわにしました。自身が手掛ける作品への俳優起用に関して過去にも警告を発していた三谷氏の厳しい言葉は、ドラマ『19番目のカルテ』の再編集問題を通じて、改めて芸能界における薬物問題の深刻さと、それが制作現場に与える計り知れない影響を浮き彫りにしています。

『情報7daysニュースキャスター』での三谷氏の憤り

9月3日、俳優の清水尋也容疑者が麻薬取締法違反の疑いで警視庁に逮捕されるという衝撃的なニュースが報じられました。清水容疑者は、主演の松本潤氏が務める日曜劇場『19番目のカルテ』(TBS系)で、松本氏の同僚医師役という重要な役どころを演じていました。この逮捕を受け、7日放送予定の最終回では、清水容疑者の出演シーンが全てカットされ、急遽再編集されるという異例の対応が取られることとなりました。

清水尋也容疑者、麻薬取締法違反の疑いで逮捕。ドラマへの影響が懸念される。清水尋也容疑者、麻薬取締法違反の疑いで逮捕。ドラマへの影響が懸念される。

『Nキャス』に生出演した松本潤氏は、最終回の内容について「なんとかストーリーが、つじつまが合うように再編集して放送するという形を……」と、制作陣の苦悩を滲ませながら説明しました。この説明を聞いていた三谷幸喜氏は、清水容疑者に対し「なんで(この作品のオファーを)引き受けちゃったんだよ、って気がする。(再編集して)辻褄が合えばいい、ってもんじゃないじゃないですか」と、強い言葉で厳しく批判しました。

さらに三谷氏は、容疑者が演じていた役柄について「あの役だって、最終回だからすごい見せ場があったはずだし。大勢の人とやりとりするシーンも絶対あったはず。それを……。今だったらCGで消すこともできるんだけど、それをできたところで、あんな良質な、素敵なドラマが、完璧でない形で視聴者に伝えなければいけない、って、ほんとにスタッフの方々、つらいと思いますよ」と、自身の作品が不完全な形で世に出ることへの深い悲しみと、制作スタッフへの同情を訴えました。

視聴者からの共感と過去の「警告」

三谷氏の発言に対し、SNS上では「三谷さんの言う通りだよ!」「脚本家の立場として…そうだよねぇ三谷さん」「三谷さんの意見がド正論」など、多くの視聴者から共感と賛同の声が寄せられました。

実は三谷氏は、自身が脚本を手がけた大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の制作発表時にも、同様の警告を発していました。2020年1月、彼は「オファーを受ける俳優さんたちに言いたいんですけど、もし、“俺ちょっとやばいかな?”、“俺、スネに傷持ってるかな?”と思っている人がいたらぜひ断ってください!みんな切に思ってます」と、出演を辞退するよう強く求めていたのです。

この発言の背景には、大河ドラマでのトラブルが相次いでいた過去の経緯があります。2019年の『いだてん〜東京オリムピック噺〜』ではピエール瀧氏の薬物事件による降板、2020年の『麒麟がくる』では沢尻エリカ氏の薬物事件により川口春奈氏が代役を務めるなど、作品の根幹を揺るがす事態が続いていました。三谷氏の願いもむなしく、今回『19番目のカルテ』で同様の不祥事が繰り返されてしまったというわけです。

脚本家としてのプライドと愛情

『19番目のカルテ』の脚本を担当したのは、『コウノドリ』シリーズなどで知られる坪田文氏です。彼女もまた熱量ある筆致で定評があり、同じ脚本家という立場から、三谷氏は坪田氏の作品が汚される気持ちが痛いほど理解できたのでしょう。

三谷氏は、演じる俳優が劇中でどんな言葉を発したら面白いかを想像しながら脚本を書く「当て書き」の脚本家として知られています。俳優一人ひとりへの深い愛情と、彼らの個性を最大限に引き出すことを重視する彼だからこそ、今回の裏切り行為に対する思いは人一倍強かったはずです。作品と俳優への強いこだわりを持つ三谷氏にとって、自身が丹精込めて作り上げた世界が、俳優の不祥事によって歪められることは、筆舌に尽くしがたい苦痛であるに違いありません。

10月からは、フジテレビで菅田将暉氏主演の『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』の脚本を担当します。これは三谷氏にとって25年ぶりの民放ゴールデンプライム帯連続ドラマの脚本となる重要な作品であり、書き手としてのプライドと責任感が、今回の発言から強く感じられます。

結論

三谷幸喜氏が発した痛烈な批判と過去の警告は、芸能界で繰り返される薬物問題に対し、作品を創造する側の深い苦悩と怒りを明確に示しています。「スネに傷を持つ」俳優たちに、三谷氏の切なる願いは届くのでしょうか。この問題は、単なる個人の不祥事に留まらず、多くの人々が関わり、情熱を注いで作り上げる作品の価値、そして日本のエンターテインメント業界全体の信頼性に関わる、重い課題を提起しています。


参考文献