ネパール首相、デモ激化と混乱収拾の中で辞任発表 – 国際社会が自制を求める

ネパールのオリ首相は9日、全国でデモ隊と警察の衝突が続く中、辞任を表明した。首都カトマンズでは無期限の外出禁止令が発令されたものの、反汚職を訴えるデモ参加者たちはこの命令を無視し、警察との激しい衝突に発展。深刻な政治的混乱が続いている。

デモは当初、SNS(交流サイト)の禁止に端を発し、その後に規模が拡大。8日には全国で19人が死亡、100人以上が負傷する事態となった。政府はSNSの禁止令を解除したものの、抗議活動は収まらず、オリ首相は辞任せざるを得ない状況に追い込まれた。

オリ首相辞任の背景と声明

オリ首相はポーデル大統領宛ての辞表で、「国内の困難な状況を鑑み、問題の解決を促進し、憲法に従って政治的解決を図るため、本日付けで辞任した」と述べた。この表明は、緊迫する国内情勢に対し、政治的対話を通じて解決を模索する意思を示唆している。ポーデル大統領の側近はロイターに対し、辞表は受理され、大統領は「新たな指導者選出のための手続きと協議」を開始したことを確認した。

首相辞任を受け、ネパール軍は公式X(旧Twitter)を通じて国民に「自制」を強く呼びかけた。オリ首相自身も同日、全政党会議を招集し、暴力が国家の利益にならないことを強調。「いかなる問題についても、平和的対話によって解決策を見つけなければならない」と訴えていたが、デモの勢いを止めるには至らなかった。

首都カトマンズの混乱と国際社会の懸念

カトマンズ市内では、デモ参加者たちが外出禁止令を無視し、国会議事堂前など複数の場所に集結。タイヤに火を放ったり、警察官に石を投げつけたりする行為が相次いだ。目撃者によると、一部のデモ隊は政治家の自宅に放火するまでにエスカレートし、地元メディアは閣僚らが軍のヘリコプターで安全な場所へ避難したと報じた。

ネパール首相辞任の引き金となったデモ:国会議事堂前で旗を掲げ、衝突するデモ隊ネパール首相辞任の引き金となったデモ:国会議事堂前で旗を掲げ、衝突するデモ隊

航空当局は、デモ隊による放火で発生した煙が航空機の安全を脅かす可能性があるとして、カトマンズの国際空港を即時閉鎖する措置を発表した。この一連の混乱は、国内経済にも大きな影響を及ぼしている。

隣国インドは、数十万人規模のネパール人移民労働者を抱えていることから、状況を深く憂慮。関係者全員が自制し、話し合いを通じて問題を解決することを強く期待すると表明した。また、日本、フランス、英国、ドイツ、米国などの主要国大使館も共同声明を発表。全ての当事者に対し、最大限の自制を求め、さらなる緊張の激化を避け、基本的人権が確実に保護されるよう要請した。

結論

オリ首相の辞任は、ネパールが直面する政治的・社会的な緊張の深刻さを浮き彫りにしている。国内の安定を取り戻すためには、平和的な対話を通じた政治的解決が不可欠であり、国際社会もその進展を注視している。


参考文献