米朝の非核化交渉をめぐり、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン燃焼実験とみられる「重大実験」を繰り返すなど、挑発行為を増大させている。
金正恩政権は一方的に交渉期限を「年末」と設定し、「クリスマスプレゼントに何を選ぶかは全て米国の決心にかかっている」(外務省高官談話)などと露骨に譲歩を迫っている。
追求すべきは、北朝鮮の核・弾道ミサイルの廃棄である。挑発抑止や交渉継続のため、贈り物を差し出すことなど論外である。
トランプ米大統領は、北朝鮮の核実験、ICBM発射中止を首脳外交の成果として挙げる。問題なのは、これを守ろうと正恩氏に無用の配慮をしてきたことだ。
日本への脅威であり、国連安全保障理事会の決議違反である短距離弾道ミサイル発射をトランプ氏が問題視しなかったのは失態ともいえる。この結果、北朝鮮は短距離ミサイル発射を繰り返し、技術を向上させた。核実験、ICBM発射の中止撤回の構えが正恩氏の外交カードとなった。
トランプ氏に求められているのは「攻め」の姿勢ではないか。北朝鮮の完全な非核化に向け、状況を前に進めることである。
その意味では、安保理協議に消極的だった米国が主導し、公開会合を開催したのはよかった。米国連大使が、短距離弾道ミサイルも「安保理決議違反」と断じ、さらなる挑発には「安保理が行動を起こす」と表明した。
新たな決議違反があれば安保理として一致して非難の声を上げ、制裁強化の準備に入る。その意思表示と受け止めたい。
22日は、2年前の安保理決議が決定した北朝鮮の海外出稼ぎ労働者送還の期限である。出稼ぎ労働者は核・ミサイル開発のための外貨獲得の手段だ。実施状況を厳しく調べ、安保理制裁の厳格履行を確かにする機会としたい。
米朝交渉の完全な決裂は双方が望むまい。「柔軟に対応する準備がある」(米国連大使)と協議復帰を促す言葉も必要だろう。
ただし、過剰な配慮はあってはならない。安保理で予定されていた北朝鮮の人権状況に関する会合は、米国の意向でキャンセルされた。日本人拉致の非道を世界に知らしめる貴重な機会が、米朝交渉の駆け引きで奪われたとすれば、容認しがたい。