国松長官狙撃事件:未解決事件の真相に迫る ― 謎多き「背の高い男」の影

1995年3月30日、地下鉄サリン事件からわずか10日後、国松孝次警察庁長官が自宅マンション前で銃撃され、重傷を負った事件は、2010年に時効を迎えた未解決事件として今もなお人々の記憶に刻まれています。警視庁は犯人逮捕に全力を尽くしましたが、真相は闇の中。一体何が起きたのか、そして犯人の目的は何だったのか。本記事では、膨大な捜査資料と関係者への長年の取材から得られた情報を基に、事件の真相に迫ります。

謎の男を目撃したジュエリー会社常務

事件発生直前の午前8時25分、アクロシティFポートに住むジュエリー会社常務の春田浩一氏(仮名)は、自宅を出て職場へ向かうためエレベーターで1階へ降り、マンションのドアを開けました。その時、Fポートの壁際に立っている男の姿が目に入ります。

背の高い男が目撃されたマンション背の高い男が目撃されたマンション

男は春田氏から約3メートルの距離に立っており、帽子、メガネ、マスクを着用し、濃い紺色のコートを着ていました。脇には黒っぽいロゴ入りのスポーツバッグが置かれていたといいます。春田氏は「どこかおかしいな」と感じつつも、Bポート方面へ歩き出しました。BポートとCポートの間の道に差し掛かったその時、「鉄板を地面に叩きつけたような轟音」が2~3回鳴り響いたのです。

不審な男が立っていた方向を振り返ると、既に男の姿はありませんでした。この異様な状況に戸惑いながらも、忙しい朝の時間に追われていた春田氏はそのまま出勤しました。

けたたましい音の正体

会社に到着した春田氏のもとへ、妻から電話がかかってきました。「大変よ!マンションの入り口で警察の偉い人が拳銃で撃たれたのよ。あなたは大丈夫?」と取り乱した妻の声。その時初めて、あのけたたましい音の正体が事件であったことを知ったのです。

あまりの衝撃に思考が停止したという春田氏。我に返ると、すぐに会社の社長である兄に事の顛末を話しました。すると兄は「犯人を見たんじゃないか」と慌てて110番通報したのです。

緊急配署された捜査員

通報を受けた上野署の古川刑事課長代理(仮名)と滝田巡査部長(仮名)は、サイレンを鳴らし緊急走行で春田氏の会社へ駆けつけました。「常務さん、不審な男性ってどんな風体でしたか?」と息を切らせながら尋ねる古川代理に、春田氏は「通り過ぎた時に、背が高いなと感じました」と目撃した男の特徴を伝えました。

犯人の逃走経路犯人の逃走経路

この「背の高い男」こそが、国松長官銃撃事件の犯人なのでしょうか。事件から30年近く経った今も、多くの謎が残されています。事件の真相究明は、日本の治安と司法の信頼を問う重要な課題と言えるでしょう。 次回以降、更に詳細な目撃情報や捜査の進展について、引き続き深く掘り下げていきます。