カジノを含む統合型リゾート施設(IR)への参入を目指していた中国企業の元役員らによる外為法違反事件に絡み、東京地検特捜部は19日、自民党の秋元司衆院議員(48)=東京15区=の事務所の家宅捜索に踏み切った。秋元氏が昨年、この中国企業が投資を検討していた北海道留寿都(るすつ)村や国土交通省で、同社関係者と面会していたことが判明。秋元氏の行動は、沖縄から北海道へとIR計画の軸足を移した中国企業の動きとも重なる。
東京都江東区の秋元氏の地元事務所では19日午前から多くの報道陣が集まり、物々しい雰囲気に。午後6時ごろ、捜索を終えた係官らが段ボール十数箱を次々と捜査車両に運び出した。
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秋元氏と中国企業との関係が表面化するのは、平成29年8月4日に中国企業が那覇市で主催したシンポジウムだ。関係者によると、秋元氏は基調講演で「気候、自然、文化、食事を兼ね備えている沖縄はIRにふさわしい」と述べ、沖縄でのIR誘致を持ち上げたという。
秋元氏はIRを推進する超党派議連に所属。内閣改造で同月7日にIRを担当する内閣府副大臣兼国土交通副大臣に就任した。
一方で中国企業はこの頃には早くも留寿都村に注目していた。関係者によると、シンポジウムの開催に関わった同社の日本人担当者らは同月ごろには村幹部に面会。翌30年1月には経営トップが場谷(ばや)常八村長を訪問し、地元でリゾート施設を展開する札幌市内の観光業者が進める誘致計画に投資を検討していることを明らかにした。
同村の担当者は「IR誘致方針を明らかにして以降、海外のカジノ業者十数社が村を訪れたが、この中国企業だけは何度も熱心に訪れていた」と振り返る。
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秋元氏が留寿都村を訪れたのはこの翌月だった。当時の政策秘書らとともに家族連れでリゾートホテルに宿泊した秋元氏は、誘致計画を進める観光会社社長や中国企業の担当者のほか、場谷村長や道庁担当者らIR誘致関係者と面会。宿泊施設は大型スキー場も備えており、子供たちとスキーを楽しんで帰ったという。
さらに4月には、副大臣を務めていた国交省で、中国企業関係者と同村幹部と面会。参入への協力を求めたという。その後も中国企業の担当者は十数回にわたり、留寿都村を訪問し、村幹部と接触を重ねていた。
秋元氏は19日、産経新聞の取材に対し、中国企業との関係について「沖縄で初めて会った。元政策秘書は(同社と)やり取りしていたのだろう」と話した。
同社は中国でスポーツくじなどを事業展開するが、カジノ運営のノウハウを持たない。そのため、出資だけ行い、実際の運営は米国などのカジノ業者と分担する計画だった。しかし、国がIR事業者を1事業者に限定する方針を示し、結果として同社は撤退せざるを得なくなったという。
北海道のIR関係者は「中国企業の担当者はIRとは別に留寿都村の不動産取引にも手を出していたようだ。村でのIR誘致計画が厳しい状況だったこともあり、何とか政治家とつながりたいという思いはあったのだろう」と話した。