【主張】大統領弾劾訴追 米国の分断固定化を憂う

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 米大統領として史上3人目の不名誉である。トランプ大統領のウクライナ疑惑をめぐる弾劾訴追の決議が、野党・民主党が多数を占める議会下院で可決された。来年早々に弾劾裁判が始まる。

 問われているのは、トランプ氏がウクライナ政府に対し、凍結した軍事支援の再開などと引き換えに、政敵のバイデン前副大統領に関する疑惑を調査するよう圧力をかけたというものだ。

 事実なら超大国の指導者としてあるまじき権力の乱用である。権威主義を振りかざすロシアの脅威にさらされ、欧米の支援を頼みの綱とする友好国を愚弄する行為でもある。自由と民主主義の守護神たる米国の地位を貶(おとし)める外交の私物化という非難は免れまい。

 トランプ氏は、下院の訴追審議を「米史上最大の詐欺だ」とこき下ろした。罵(ののし)り合いで米国政治の混迷が深まれば、ほくそ笑むのはプーチン露大統領であり、中国の習近平国家主席ではないか。その愚を避けるよう、証拠に基づき粛々と弾劾裁判を進めてほしい。

 弾劾手続きの舞台となる上院は与党・共和党が多数を占め、トランプ氏が罷免される可能性は極めて低い。そうだとしても大統領には疑惑解明に進んで協力する責務がある。下院調査に協力しないよう高官らに指示した「議会妨害」が二度とあってはならない。

 権力の監視役を担う議会の責任も重大だ。来年11月の米大統領選に向けて2月には民主党の予備選も始まる。罷免がほぼ不可能な状況だからといって、弾劾裁判を党派闘争の場にすべきではない。

 深く憂慮するのは、訴追に至る与野党の対立で米国政治の分断がさらに鮮明になったことだ。

 世論調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、調査に答えた73%は、共和党と民主党が「政策はおろか基本的な事実も同意できない」とみている。大統領選前に分断は固定化したといえる。

 今後、トランプ氏の政策も、民主党候補の公約も、それぞれの支持層を逃さぬよう一段と内向きになる危うさがある。

 世界情勢は来年、ますます混迷の度を深めると予想される。中露の干渉が進む欧州諸国の亀裂は深く、東アジアでは、デモが続く香港や総統選を控えた台湾への中国の介入も激しさを増す。米国は自らの分断につまずいているときではないはずだ。

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