自然災害や大事故で大勢の負傷者が出た際に医療機関が治療の優先順位を付けるトリアージ。こうした手法を、枚方寝屋川消防組合(大阪府枚方市)が昨年5月から、災害時の119番に取り入れた。その名も「コールトリアージ」。消防が通報内容を判断して、消防・救助・救急隊の派遣を決める仕組みだ。消防庁によると災害時の救助・救命での運用は全国的にも珍しい。阪神大震災から17日で25年。その後の自然災害でも通報が殺到した教訓を生かして、迅速な救助活動を目指す。(小泉一敏)
「電話がパンク状態で対応できなかった」。枚方寝屋川消防組合の小椋健消防司令は、平成30年の大阪北部地震と台風21号の発生当時を振り返る。
同年6月18日朝に起きた大阪北部地震では、枚方市で震度6弱の揺れを観測。直後から通報が殺到し、発生後3時間で199件と、同年の1日の平均通報数(186件)を上回った。
台風21号が近畿を通過し、各地で被害に見舞われた同年9月4日も、風が強まった午後1~8時に724件の通報が寄せられた。いずれも指令センターでオペレーターを通常の3人から7~11人に増やしたが、1件あたりの対応に時間がかかり、数時間にわたり電話に出られない状態が続いた。
同組合の吉岡消防司令長は「こうした混乱状態は、阪神大震災以来。本当に救助が必要な場合に対応できない可能性があり、対策が必要だと痛感した」と説明する。
一方で、通報内容を精査すると、大阪北部地震では「倒れたタンスをどけて」「止まったガスを使っていいのか」など、199件のうち166件(83・4%)が緊急性はないと判断された。
台風21号でも、「瓦が落ちそう」「風が強く避難所に連れて行ってほしい」「役所に電話がつながらない」といった内容で、724件のうち、685件(94・6%)が「緊急性なし」だった。